起業で一番重要な経営指標 「従業員一人あたりの粗利益」

起業するにあたって、いちばん重要となる経営指標は何だろう。

これは経営者のスタイルによって好みがあると思うが、起業段階のビジネスにおいては「従業員一人あたりの粗利益」に注意するのが一番良いと思う。


粗利益は、売上額から商品仕入代金や原材料代(部品代)などの仕入を差し引いただけの単純な利益だ。*1

この「売上−仕入」で計算される粗利益(売上総利益とも言う)は、いわゆる経費(販売管理費とも言う)を含んでいないので、かなり極端な状態*2でない限りは、常に黒字である。そして、ここから各種人件費・家賃・通信費・賃借料などなどの経費を差し引いて、事業として本当に黒字であるかどうかという判断になる。*3

この粗利益は、1つ1つの商品やサービスが売れるたびに確実に計算できるものであり、「事業の将来像」をイメージした際にも試算しやすいという面もある。そして、粗利益を従事する社員数で割った「従業員一人あたりの粗利益」は、その事業の労働生産性を示すような指標でもあり、この点で目標値やベンチマークとしても、達成値としても重要となってくる。

また、事業が理想状態へと成長していく際に、どれだけ高い「従業員一人あたりの粗利益」を達成できるかというところは、社員がどれだけの給料を受け取れるかと強く関係する指標でもあり、これは新規ビジネスを考えるにあたっては重要な要素だと思う。


一方で、例えば稲盛和夫の経営塾―Q&A高収益企業のつくり方/お風呂本1号 - 起業ポルノのエントリーで以前に紹介した京セラの創業者の稲盛氏が好きな経営指標「経常利益率」について考えてみると、確かに重要な指標なのだが、特に人件費などの「固定経費」と売上高とのバランスの影響を強く受け、また創業期は赤字になりやすい指標であり、起業初期に設定する目標としては難しく、やはり「従業員一人あたりの粗利益」で考えるのが良いと思う。


「従業員一人あたりの粗利益」で考える際の注意点としては、資本集約型の設備投資を多く実施する産業であったり、家賃が高い場所にオフィスや店舗を借りた場合は、「従業員一人あたりの人件費以外の経費」も大きくなり単純比較はできなくなってくる面がある。ただ、リスクマネーを大量に集めるベンチャー起業でもしない限りは、起業するビジネスで高額な投資をしたり、高額な経費をかけるような余裕はなかなかないと思うので、どのビジネスモデルで起業しようか比較する場合などでは「従業員一人あたりの粗利益見込み」で考えて良いと思う。

なお、当然の話になると思うが、少人数経営の場合は社員が1人増えるだけで、「従業員一人あたりの粗利益」は大幅に減るし、増員分が収益力としては反映するまでにはタイムラグがあるので、あまり短期的に一喜一憂するような指標ではなく、長期目標として考えるのが良いと思う。


個人的には、もし本当に起業するのであれば、この「従業員一人あたりの粗利益」をバイトやパートを除いた計算として、事業が軌道に乗った際には「1200万円/人・年」を超えるようなイメージが沸くビジネスで起業したいと考えている。

取らぬ狸のなんとやらだが、いかがだろう。


(どうして「1200万円/人・年」超えるようなイメージが沸くことを重視するのかは、他のエントリーにつづく)

*1:製造業で工業簿記だと製造原価に労務費とが入ってきて、もっとややこしいが、よく知らないのもあって、ここでは無視している

*2:粗利益がマイナスの極端な状態→例えば1000円で仕入れた商品をヤフオクで1円出品してたら1円で落札されてしまったとか

*3:経費も考慮した利益としては、営業利益・経常利益・税引き前利益・純利益などがある