橋下徹【2】

内田樹氏が、橋下大阪府知事を批判している。正直言って、個人的には、ほとんど共感できないのだが、皆さんは、どう思われるだろう。

橋下府政三ヶ月の総括 - 内田樹の研究室

新聞記事だけから断片的に知れるのは、この人が着任以来「金の話しかしない」ということである。
「政治というのは金の分配のことである」というのがこの人の信念らしい。
その点では、「金で買えないものはない」とうそぶいた堀江貴文や「金儲けは悪いことですか?」と獅子吼した村上世彰と同系列の人物と見てよろしいであろう。
「金の全能性」への信仰が血肉と化しているという点で「魂の兄弟たち」である。
だから、メディアや府下の市町村が「金の分配の仕方」について批判したり、異議を唱えたりしている限り、「政治とは金の分配のことである」という橋下イデオロギーはますます強固なものになる。
橋下府政三ヶ月は「政治的難問とは金がないことであり、金さえあれば世の中のほとんどすべては解決する」という強固な確信のうちにその反対者たちをも含めて巻き込んだ。
その点では、序盤戦は橋下知事側の「大勝利」と評価してよろしいであろう。
彼が府知事に選ばれたのも、「ぶっちゃけた話、『金がない』というのが大阪のかかえる唯一の本質的な問題なわけでしょ」というシンプルなストーリーに有権者たちが飛びついたからである。
その点では「構造改革」や「郵政民営化」の小泉イズムと似ていないこともない(スケールははるかに小さいが)。
今のところ、府政にかかわるすべての議論はあたかもそれが真の問題であるかのように「リソースの分配」をめぐって熱く展開している
けれども、これは「あたかもそれが真の政治問題である」かのように仮象しているだけで、真の政治問題ではない。
真の政治問題とは「リソースを優先的に配分する使途を、明確なヴィジョンに基づいて明らかにし、承認を得ること」だからである。
ビジネスの場合であれば、話は簡単である。
「リソースを優先的に配分する使途」とは「採算がとれる部門」のことであり、分配がカットされるのは「採算不芳部門」だからである。
ところが行政はビジネスではない。だから、「採算の上がる部門」というものは存在しない。
久しくリソース分配の優先順位は、「次の選挙で票が集まりそうな事業」に予算をつけようと争う政治家たちの実力差によって決された。

私は、永住する可能性は低いと思っているものの、大阪府民だ。一紙しか読んでいないが、夕刊の地方欄にも橋下知事の記事が載っていて、興味を持って読んでいる。確かにコストカットの話が多いが、精力的に公務をこなしているように思える。

内田樹氏が、橋下知事堀江貴文村上世彰などの刑事被告人を並べて同系列というのは、よほど気に障る何かがあったのであろうか。

私は、まずはコストカットというスタンスに大賛成だし、彼がやっていることはカルロス・ゴーン氏が日産でやったことの序章ではないかと思っている。まずは聖域なきコストカット。続いて対話。そしてビジョン発表(日産リバイバルプランも就任半年後、実施はさらに半年後)。そして再生。

橋下知事は1969年生まれ。まだ30代で政治経験は皆無。立場が人を作るという目で、もうちょっと気長に見たいと思う。彼はまだベストではないかもしれないが、明らかにベターチョイスであり、まだまだ成長途上だと思う。

内田樹氏は、職員の士気という面でも厳しい。これは単純には否定はできないが、私はそうでもないと思う。朝礼のエピソードを見てもそうだが、ぬるま湯に浸かった職員の士気を上げるためには、まずは規律、そして厳粛に給与カットという面は、むしろ必要だろう。


日本という国全体で見ても、若い政治家が、将来を憂い改革を進めるというのは絶対に必要なことだと思う。確かに橋下知事には、今は発表できているビジョンというものがないと言えるかもしれないが、少子化対策や子育て世帯支援などを実施する意思は高いと思う。

私の年代から言うと、正直、府の財政が破綻を回避するだけでも、世代間ギャップという意味では、かなりのグッドジョブだと思うし、それ自身が最大のビジョンでいいとさえ思う。

個人的には数年後でいいので、私学助成を削って保護者が一定収入以下で成績優秀者への奨学金制度(30歳になるまでは無利子貸与で府内で就業すれば返済義務が減るとか)を作るとか*1、日本全国に広がるような少子化対策を大阪からスタートさせて欲しいと思っている。

なお、橋下徹氏について書くのは、このブログの本論とは無関係なのだが、立候補当時に続いて2度目だ。前回書いたことも、要点を再掲しておく。

http://d.hatena.ne.jp/T-norf/20080125/1201394027:Title
今週末は大阪府知事選挙だ。話題の候補、タレント弁護士の橋下徹が出馬しているので、ほんの少しでも応援したい。


応援する理由は単純で、若くて賢くてバイタリティーがあるから。今の日本の閉塞感、関西の閉塞感を打破するには、今までのやり方の延長のような政治をやる人間ではだめだ。特に、選挙に勝つことがゴールのような候補者には知事になって欲しくない。


(中略)


一方で、最大の被害者は団塊より下の世代で、特に現在20代から30代前半の層だ。企業の非正規雇用促進に伴って正社員就職が困難であっただけでなく、進む少子化から将来年金支給も少なくなるし、何よりも、ジャブジャブ景気対策の借金を一生背負って、重くなる税負担・年金・健保の支払いに耐えなければいけない。


うちは子供がいない夫婦二人だけの世帯だが、橋下のマニフェスト、子育て世帯支援には圧倒的賛成だ。


出馬を20000%否定していたとか、暴言が多いとか、それはタレントという立場でのこと。小さなアラがあっても、もっと大きなメリットがあれば、それでいいじゃないかと思う。

*1:隣接府とはいえ通学圏なので、一部の新入生の学力が上がって、内田樹氏も喜ぶはずだ