起業と人事について具体的に考えてみた/人事雇用【2】

起業と人事、まず採用について、具体的に考えてみると、以下のような流れになると思う。

  1. どのタイミングで探しはじめるか
  2. 求人をどうするか。(手段、広告の場合かける費用等)
  3. どのような給与待遇で、どんなスキルを持った人を対象に募集するか。
  4. どんな条件であれば雇うか。
  5. 条件面で微妙に惜しい人が来たらどこまで妥協するか。
  6. 業務の役割分担をどうするか。

こうして具体的に考えてみると、社員数名以上の規模の会社をつくり、それを成功させる起業がかなり困難だというのを実感してしまうのだが、いかがだろう。



2.相応の価値があるリソースを買えるとは限らない
5.人件費が最大の経費要因

先のエントリーの「起業の人事の8つのポイント」の上記2つのポイントで、まず新規雇用は思い通りに行かない可能性が高いので、タイミング・スキルについてはある程度の幅を見ないといけない。一方で、もの凄く資金を食う。いつ、どんな人が増やせるか分からずに、上手く経営の舵取りをしなければいけないという話になり、コアスキルを新規雇用メンバーに任せる起業プランというのは、大きなジレンマを抱えた状態からのスタートになるのだ。

ちょっと設定パラメータは違うが、下記書評で紹介されているエピソードなんかは、コアスキルを持たない起業例として面白いと思う。

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51023712.html:Title
作りたいものがある。しかし作る能力がない。どうしたか、当然外注することになる。同社の(現時点における)最大の危機は、このことが招いた。最初の外注先がバンザイしてしまったのだ。本書の表現だと「夜逃げ」ということになるが、同社はその損害を賠償させたので、夜逃げという表現はおかしいと思うが、とにもかくにも最初の外注先で同社は半年を失った。

こういったジレンマがあるので、共同経営で起業するということが良く行われていて、この共同経営の最大の利点は、人材面でのミニマムなフォーメーションができていることにあると思う*1。もちろん、集団スピンアウトみたいな形での起業も理想形だと思うし、そこまで行かなくても、事業が軌道に乗ってきた場合に誘えるような知り合いがいるというのは、起業で成功する上で、とても重要な要素だとも思う。

というわけで、もう1つのポイントに繋がる。


3.知人を頼って人を集めることが重要

ちなみに、知り合いをリクルートするのは職種にもよると思うが、まずは副業的なパートタイムから誘って、事業が好調ならば、泣き落としでフルタイム業務へ引きずり込んでいくという作戦が有効だと思う。

あと、逆に優秀な知り合いが、何かの理由で退職してフリーになったタイミングや、転職を考えたタイミングで、こっちも会社を辞めて起業を仕掛けるぐらいの考え方の方が、上手く行くのではないかと思う。もちろん、そのためには普段から事業計画を練って、準備を万端にしておく必要があるし、まずはその優秀な知り合いに事業計画を見せて、共同経営者になって貰う必要がある。


ところで、私も脳内シミュレーションをしていて気付いたのだが、ある程度の規模で、事業もそれなりに上手く行っている企業に10年以上勤めている状態から辞めて起業しようと思うと、周囲にいる人材のレベルは高いものの、今の勤務先への忠誠心も高く、貰っている給与もそれなりに高いので、よほど飛びぬけて優秀な同僚じゃない限りは、より高待遇で引き抜くというのは割に合わないのではないかと思う。

(ただ、当然、より高待遇で引き抜くだけの資金はないので、それも無理。)

さらに、自分が会社人間だったりすると、会社関係以外の知人も少なくて、起業後にリクルートできる人脈という意味では、不利な環境にあることになる。

ちなみに、自分が辞めるだけでも元職場との関係は微妙になるのに、そこからさらに人材の引き抜きでもしようものならば、人脈が濃い元職場との関係が悪化するので、立派な大企業にいる方は、同僚の引き抜きというのは極力避けるべき事項だと思う。

人材の引き抜きをすると関係が悪化するのは、何も戦略シミュレーションゲーム三国志信長の野望の中だけの話ではない。現実にやると、間違いなく目の敵(かたき)にされるだろう。どうしても必要な人材の場合、一緒に辞めて共同経営という形にするか、元の職場との関係は諦めるかだと思う。


ところで、経営者自身の素質が格段に上である30代、40代の起業と比較して、20代の起業の方が意外と成功率が高い傾向があるように思えるのだが、これはこの一連の問題の裏返しで、交友範囲に安い賃金でも夢を持って働いてくれるような若い人脈があるからという要素が大きいのではないだろうか。

20代半ばぐらいまでであれば、就職先によっては、まだまだ重要な仕事を任されていないことも多いが、30代に入ってくると職場でも重責を担っており、家庭を持っていることも多く、同年代の知人が起業するからといって、そうそう参加するといったことは難しくなってくると思う。

だから、私みたいに30代後半になっても起業を夢見ているような人間は、本気で起業を目指すのであれば、普段から社外の若い人との交流を、真剣に考えた方がいいと思う。(と自分に強く言い聞かせる)


なお、起業の人事といいながら、前回エントリーを含めて採用のことばっかりを書いている。ただ、やはり採用が一番大事で、あとは下記の、はてな近藤社長の言葉が説明してくれていると思う。

http://d.hatena.ne.jp/jkondo/20080312/1205274437:Title

その方は、会社の組織の作り方や就業規則などについて詳しく聞きたがっていたのだが、まだ社員もいない状態で心配すべきなのは、どうやってビジネスを立ち上げるかであるし、少人数のうちは規則なんかよりも言葉の方がずっと重要だと話した。最初は就業規則なんて標準的なものにしておけば良いし、規則の中に事細かに休日の規定が書いてあったりするよりも、大変そうな社員に「今日は休め」と言ったり、時間外でも頑張った社員に「頑張った」と労ってあげる方がずっと重要だと思う。そうやって声をかける事ができないくらい人が増えたころに、ちゃんとルールを作っていけば良いと思う。

このエントリー、なんだか私自身の立場を想定した上での、起業の傾向と対策みたいになってしまった。自習ノートみたいなものだが、誰か他の人の参考にもなったら幸いだ。

人事雇用の連載エントリーの目次


【1】起業の人事の8つのポイント
【2】起業と人事について具体的に考えてみた (このエントリーです)

*1:先の引用例のエニグモ社の「ミニマムなフォーメーションになっていない共同経営」というのは、弾氏も違う視点で述べているが、例外中の例外だと思う