ロスジェネ世代の不幸は起業家のチャンス/人事雇用【5】

ロスジェネ世代が社会に出てからの雇用環境は劣悪で、本当に不幸だ。ただ、血も涙もない発想かもしれないが、これは起業家にとってはチャンスだと思う。

なぜなら、ロスジェネ世代には優秀な人材であっても劣悪な就業環境で苦しんでいるケースが多く、そういった人材を見つければ、資金力が乏しい起業直後の会社であっても、将来の夢を共有する形で自社へと引き抜ける可能性が高いからだ。

ただ、ロスジェネ世代と一言でいっても、どの年代が対象で、どれぐらい不運だったのか曖昧だと思う。というわけで、いくつかグラフも作って、正しいと思える情報を集めてみた。

(こういう情報、本質的には人事採用担当者が必要とするものだが、中小企業の社長というのは、すべからず人事採用担当者を兼ねることになると思うので、社長さんや起業志望の方は知っておいて損はないと思う。)


まず、結論から先に言うと特に2000年〜2005年、多少幅を見た場合1998年〜2006年に社会に出ている若い方の履歴書を見た場合、経歴が非正規雇用中心であるからといって大幅減点してはいけない。一番やってはいけないのが、それだけを理由に書類選考で落とすことだと思う。もうひとつ言うと、新卒採用面接でのアピール力が弱そうなキャラクターの人材であればあるほど、優秀な能力・潜在能力の割には不遇の経歴を持っている可能性が高くなっていると思う。

それでは、以下、これらを示す雇用関係の統計情報をグラフで紹介していきたいと思う。

Fig.1 1990年〜2007年 失業率/非正規雇用率推移(年代別)


(イメージ本体をクリックしても拡大表示にはなりません。Fig.1拡大表示はこちら

Fig.1の概要を説明すると左目盛りが失業率で、下6本の実線の折れ線が5つの年齢層と総合値としての失業率の推移を示している。上6本は右目盛りの非正規雇用*1の推移を示している。

1点、大きな注意事項として、15〜24歳の非正規雇用率は統計上非連続な値となっている。2001年以降は、学生を除外した統計値があるのでそちらを採用したが、2000年以前は学生を含む値しかないため参考値として考えて欲しい。

元にした統計資料や、その他注意事項は右の注釈に記載した。*2 *3 *4
(※注釈はクリックしなくても、ポイント(マウスオーバー)して待つことでも表示可能)

このグラフから分かる特徴は以下のような点になると思う。

  • 紺色の実線15〜24歳の失業率が常に抜けて高く、ピークは2003年の10.1%。世間では失業率が5%を超えたと大騒ぎしている中、若年者だけ見ると凄く不幸な社会であった。*5
  • 水色の実線25〜34歳の失業率推移は、90年頃には、ほぼ総合失業率と同一であったが、年が経過するについて、悪い方へ乖離している。
  • 失業率は2002年(15〜24歳では2003年)に頭打ちして改善してきている。
  • 失業率は回復する一方で、非正規雇用比率は上昇を続けている。ただ、若年層では15〜24歳で2005年をピークに僅かながら減少に転じており、25〜34歳でも2006年から2007年はほぼ横ばいで、上昇トレンドが止まった可能性もある。(ただ、高止まりしているとも言える)
  • 水色のぼかし線25〜34歳の非正規雇用比率が一番低い。ただし徐々に上昇して、他の年代に接近しつつある。
  • このグラフから見ると、最も苦労したのは1999年〜2004年に社会人スタートした年代。非正規雇用比率も考慮しつつもう少し幅広く見ると1998年〜2007年に社会人スタートした年代。(ただ、10歳階級の値なので、この表だけでは新卒のトレンドを正確にはつかめない)

また、グラフを見て、「25〜34歳の非正規雇用比率が一番低い」ということに違和感を感じたのだが、学生アルバイトを除外したデータがあるものの、「主婦パートタイム勤務」という要素の関与*6も大きいに違いないと考え、続いて、若年層を中心とした男女別のグラフを作成してみた。

Fig.2 1990年〜2007年 失業率/非正規雇用率推移(若年壮年の年代・男女別)


(イメージをクリックしても拡大表示にはなりません。Fig.2拡大表示はこちら

Fig.2も、「左と右の目盛り」や「下6本と上6本の折れ線」が、「失業率と非正規雇用率」を示しているところはFig.1と同じになっている。ただ、6本の折れ線は、男女それぞれに3つの年代層を示している。

ここでは、25〜34歳、35歳〜44歳の非正規雇用比率は、男女別で見事に分離している。これは、やはり「主婦パートタイム勤務」ということの影響が大きいと考えられる。

そして男性にだけフォーカスして見ると、若い年代層ほど失業率でも、非正規雇用比率でも苦労しているのが明らかだ。

このグラフから分かる特徴は以下のような点になると思う。

  • 一番失業率が高いのは、15〜24歳の男性。(ピークは2003年の11.6%)
  • 正規雇用に苦しんでいるのは、女性と15〜24歳の男性。
  • 25〜34歳の男性の非正規雇用率についても無視できない高い値となってきている。(ピークは2006年で14.1%)
  • 正規雇用率が低下するトレンドは、15〜24歳の女性が牽引している。

続いて、より直接的に卒業年度毎のの雇用情勢を反映していると思われる「大卒者の内定率」の統計資料を元にグラフを作成してみた。

Fig3. 1997年〜2007年 大卒者内定率推移


(イメージをクリックしても拡大表示にはなりません。Fig.3拡大表示はこちら

こちらのグラフは単純で、10月1日時点の内定率と、最終(4月1日)時点の内定率を、卒業年で表している。

元にした統計資料や、その他注意事項は右の注釈に記載した。*7 *8 *9 *10

まず「最終内定率」で見ると、1998年の93.3%から2005年の93.5%まで、94%を割り込む冬の時代となっており、2006年、2007年には1997年以降の最高値を更新している。

ただ、一般に優良企業は内定を出す時期を前倒ししていて、夏までにはほぼ全ての内定を出す企業が多い*11ため、「10月1日内定率」にも着目したくて、グラフに表示した。

おそらく、希望した企業へ正社員で就職内定を獲得できていることへの相関性は、この「10月1日内定率」の方が高く、またFig.1の15〜24歳の非正規雇用率が継続して30%を超えていることを考えると、「最終内定率」には派遣社員契約社員としてやむなく採用されたケースが相当数含まれていると考えられる。

「10月1日内定率」は1997年から1998年にかけて増えている点は不思議だが、2000年から2006年にかけて特に低い値をとり、2004年に底を打っている。

ちなみに、グラフには表示できていないが、2008年卒業の「10月1日内定率」は統計値が出ていて69.2%となっている。新卒者にとって就職戦線が冬である時代は終わったと考えて良いだろう。

まとめ

結論は最初に書いた通りで、特に2000年〜2005年。多少幅を見た場合1998年〜2006年に卒業した世代がロスジェネ世代と言えると思う。こういった世代での人材市場のゆがみは、起業家や人事担当者に限らず、今後も長く日本社会に残る事実として認識しておいた方が良いと思う。

(ただし、内定率・非正規雇用率・失業率だけに着目したので、有効求人倍率など、もう少し違うデータを見ると違う結果が出るかもしれない)

また、冒頭に書いた「起業家にとってはチャンス」という話は、有名なIT起業家が多い世代(→76世代=ストレートで1998年卒業)が実際に活躍している一因になっているのではないかとも思う。不遇な環境にある同世代を救うという意味でも、意欲と能力あるロスジェネ世代の起業家の成功というのは貴重であり、必要とされていると思う。

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*1:正規雇用には統計上「派遣社員契約社員、嘱託、パート、アルバイト」の分類がある

*2:Fig1, Fig2のグラフは次ののサイトより取得した2つのExcelファイルを手動で結合した値より作成した。統計局ホームページ/労働力調査 長期時系列データ:参考表3:(8) 年齢階級(10歳階級)別完全失業者数及び完全失業率(エクセル:37KB)、参考表10:年齢階級,雇用形態別雇用者数(エクセル:221KB)(正規の職員・従業員,非正規の職員・従業員(パート・アルバイト,派遣社員など

*3:Fig1, Fig2の非正規雇用率は統計上の集計の差異から1990年から2001年の2月の値を使用しており、2002年から2007年は1〜3月の値を使用している。

*4:失業率については5歳階級のデータもあり気になったのだが、10歳階級の情報しかない非正規雇用についての情報と比較を作成するために、Fig1, Fig2上では10歳階級の値に統一した。

*5:15〜24歳の失業率が高いのはニートなどの働く意思が弱い人間も一部にはいただろうし、失業してもパラサイトシングルという感じで甘えることができたので失業率が高かったという面もあるだろうが、2004年以降は漸減するところから、原因が社会の方にあったのは間違いないと思う。

*6:不況になって家計収入を補うために専業主婦を返上してパートやアルバイトをする主婦の方の比率が上がると、非正規雇用比率は統計上大きく上がるはず

*7:元データ1) http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/indexkr_21_1.html:Title第2−1表 大学・短期大学・高等専門学校及び専修学校卒業予定者の就職(内定)率の推移(全体)

*8:元データ2)http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/03/index.html:Title2008年3月14日 平成19年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(平成20年2月1日現在)について

*9:上記元データ1) を元に1997年から2004年の卒業者、元データ2)を元に2005年から2007年の卒業者のデータを拾った。

*10:この内定者率の統計情報にも男女別の値があり、その差も興味深いのだが、世代でゆがんだ人材市場というテーマから考えると、大きな影響がないと考え男女共通の値を利用している。(「10月1日内定率」では90年代は男性が10%以上高いく女性が低いという差があったのが、2004年頃からかなり接近しており2%ぐらいの差になってきている)

*11:大企業や中堅企業では2月頃から内定が出始めて大半の内定は夏には出ると思うが、一部には秋に公務員試験や教職試験の不合格者をメインターゲットに2次採用をかける企業もあると思う