会計の勉強をする良い方法

起業をして社長になるんだったら、会計知識が絶対に必要になってくる。ただし「会計知識なんて、必要になれば自然に身に付くから、事前に勉強しなくてもいいよ。」という意見もあり、私もこれは正しい部分があると思う。

こういった言説が出てくる裏には、会計という概念知識は「具体的な会計対象がない状態で勉強するのが結構難しい」ということがある一方で、「具体的な会計対象」があれば、それほど難しいものでもないので、時間をかければそのうち理解できるようになるという事情があると思う。

このエントリーは、下記のホッテントリーに触発されて書き始めたのだが、エントリー主のmojix氏は独立して会社を設立されている方なので、重要な視点が抜け落ちている。

ウィキペディアで会計関連のページを見てみたら、とても充実していて驚いた。

(中略)

ウィキペディアはWebの「フリー百科事典」なので、「貸借対照表」「損益計算書」といった各概念ごとにページがある。各概念の解説ページは図表を使って自在に構成されていて、解説文の中に出てくる概念にはリンクが張られ、その概念の解説ページにいつでも飛べる。

会計はたくさんの概念で組み上げられた「概念体系」なので、特に上記のような基本概念をまず理解しないと、なかなか入り込めない。初学者はこれらの基本的な概念が理解できるまで、何度も立ち戻って理解する必要がある。そのためには、紙の本を通読するよりも、このウィキペディアで学ぶほうがわかりやすく、効率がいいと思う。
http://mojix.org/2008/07/04/accounting_study_on_wikipedia:Title

ここでwikipediaの方が学びやすいのは、おそらくはmojix氏が自分の会社という「具体的な会計対象」を目前に抱えているからであって、実際にマネージャや社長ではない一般の方が、wikipediaの「貸借対照表」「損益計算書」を眺めたって、そうそう会計知識が身に付く可能性は低く、そういった場合はやはり書籍で勉強する方が良いのではないかと思う。


ところで、冒頭で「会計知識なんて、必要になれば自然に身に付くから、事前に勉強しなくてもいいよ。」という言葉を紹介したけど、私は会計知識があるのとないのでは会社経営をする上では結構な実力差が付くから、できる限り起業前に会計知識は身につけておいた方が良いと思っているし、実際に私は知識を身につけているつもりだ。

ただ、私自身は特にみっちり本を読んで勉強したというわけではない。一応、マネージャをやっているのでOJTで習得したという面もあるが、大きいのは株式投資を熱心にしていた頃に、対象企業の財務分析をいろいろとやったことだと思う。これは自分のお金が懸かっているので真剣になれるし、こういった題材があると、それこそwikipediaのようなネット上の情報がすごく役に立つのだ。

なお、投資対象の財務分析のみだと、どうしてもB/S・P/L(+せいぜいキャッシュフロー計算書)が中心になり、実際の仕分けについての知識は身につかない。ただ、社長という職業を選択するのであれば、事前に勉強するのはそれで十分だと思う。伝票数にもよるが、ある程度の会社規模になれば財務・会計については専門職を置くべきだし、数名規模で社長自身が仕分けする必要がある場合だって、それこそ「必要になれば自然に身に付く」作戦で十分だと思う*1

まとめると、「起業家として必要な会計知識を習得する近道は、株式投資をして、その企業の財務分析を一生懸命にやること。参考資料としてはwikipediaはかなり役立つ」ということになると思う。


なお、これだけだとちょっと寂しいので、会計を理解する上で重要となる3つのポイントと思ってることを、最後に紹介しておきたい。

・基本中の基本だけど、B/Sはある瞬間(例:2008年4月1日)の会社の資産状態を表す決算資料。P/Lはある期間(例:2007年4月1日〜2008年3月31日)の会社の売上・利益等を示す決算資料。

・利益を出して借金を返すと、B/Sの右側(貸方)で「負債−純資産(資本)」の境目線が上へ動く。この境界線がどれだけ上に行っているかというところが、リッチな会社であるという証しになる。一方で、下にはみ出た状態(純資産がマイナス値)が債務超過

・勘定科目にはB/Sにだけ登場する「資産・負債・純資産(資本)・etc」と、P/Lにだけ登場する「収益・費用」に属する科目がある。ただし実際の仕分けでは両方の勘定科目が入り乱れる形になるので、この点を整理して理解する必要がある。

以上

*1:仕分けは単純労働なので「必要になれば自然に身に付く」作戦で十分だけど、財務分析は奥が深いので、じっくり目を養っておくことが好ましいように思う