貨幣価値は経営と顧客が決める

前回エントリーでは、著作権は独占だから廃止しようという趣旨の池田信夫氏のブログエントリーに反論したところ、池田氏から「著作権は必要か」というタイトルでトラックバックを頂いた。こちらのエントリーで、池田氏が書いていた「契約ベースで多様な情報の流通形態を創造」の中身が分かった。


今回の池田氏のエントリーは、あくまで前回エントリーの補足になると思うが、コピーOKが前提となっているように読める記述があったり、レコード会社より著作者の権利の強さを問題にしているところなど、賛同できない部分も多い。ただ、私はBoldrin-Levineを読む気力が沸いてこない(Chapter Titleは刺激的だけど、私の英文読解力は低いし、時間がかかりすぎる)ので、これ以上の反論は控えたいと思う。


私の考えとしては、あくまでコンテンツ同士が競争する市場があれば、著作権であったり、私的複製以外の部分でのコピー禁止措置というのは、存在して良い思っている。これは、高い価格設定であったり厳しいライセンスというのは市場淘汰される運命にあり、多少は独占的かもしれないが許容される範囲だと思うからだ。

ただ、コンテンツホルダー同士が連携するのはカルテルだし、独占的地位を元にダビング10から補償金を取ろうというのも違法に近いものがあると思う。

なお、音楽に限定すれば、レーベル(レコード会社)の力が強すぎて、著作権者の意向を無視して収益拡大に走る側面があったり、広告や営業力、また「メジャーデビュー」というブランド力を元に、著作権者と消費者の利益を無視して、自己利益の最大化に走っているところでの問題が大きいように思える。

ここへの対策は単純で、ネット流通を主体とする、著作者と消費者の利益を最大化するネットレーベルが新規参入して、時間はかかるだろうが、市場を制圧していけば良いと思う。もちろん、ネット流通を主体とするレーベルは、コピーフリーのコンテンツで営業広報活動するスタイルを採用したり、いろいろ池田氏が考えているような契約も駆使して、既存レーベルを淘汰していく形になるのが理想形だ。

(誰か大物アーティストが賛同すれば比較的簡単に成立しそうだが、人脈と義理人情を駆使して、簡単には既存レーベルが許さないという面もありそうだ)

なお、こういったところで、ネットがコスト面で淘汰すべきなのは、あくまで「流通」であり、「コンテンツ創造」そのものではないので、当たり前だけど、コピーフリーで価格が極小化するのを是認はできないし、やっぱりDRMは必要だから利便性が高い標準実装を実現していくことが重要なのではないかと思う。


私もさまざまなウェブビジネスの収益構造(ビジネスモデル)を妄想することが多いので良くわかるが、ウェブの世界ではまずは顧客利益を優先して、企業利益は劣後というスタイルが当然となっている。一方で著作権ビジネスは、企業利益や著作者の利益が最優先されるような状態にあり、顧客利益はあまり考えられていない。これは独占的だし、変えていかなければいけないというところでは、池田氏の意見に大賛成だ。

なお、前回エントリーのタイトル「複製コストがタダのものには貨幣価値はないの?」という問いに自分で答えると、複製コストがタダだろうが複製の許諾を含めて「貨幣価値は経営と顧客が決める」と思っている。というわけで、今回エントリーのタイトルにしてみたが、いかがだろう。