経営がわかっている労働者と、わかってない労働者の格差が拡大していく本当の理由
fromdusktildawn氏が、「経営を理解している労働者と、そうでない労働者の格差が拡大していく理由」というタイトルで正論を展開していた。
「自由市場 + 機会の平等 + セイフティーネット 」
fromdusktildawn氏のいうネオリベの理想社会。これは私も似たようなところに理想社会を求めているかもしれない。ドラッカー(著書多すぎ+文庫新書サイズじゃないのでまだまだ全部読めない)を出したせいで逆に、finalvent師匠にツッコミを入れられているけど、言ってることの本質には賛成だ。
finalvent氏のエントリーの最後にある「つうか、こんな話題、現代で議論する課題じゃないですよ。」は、まあ正しいだろう。私の感覚だと下記エントリーがそもそも釣りっぽくて、fromdusktildawn氏っていう大物が大口を開けて食い付いて来たという流れに思える。
そもそも、少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料をというのはがんばった労働者に与えられる褒美ではなくて、労働者が持つ不可侵の権利なのですから、大学で変に経営者の理屈を内面化するよりも、経営者と殴りあう作法を学んだほうがよほど世の中に貢献できる気がしますけどね。
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080731/p2:Title
私も正直これは、ないわーって思った。「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料」が「権利」っていう世の中は、ある種の理想としても成立しないように思う。「少しでも楽な仕事」「少しでも多くの給料」が進むと「真面目一生懸命に働くのは損」になり、例えば以前の社会保険庁のように「1日の入力文字数は5000文字まで」という協定ができたりして、給与が確保できる限りにおいて、生産性は落ち続ける。
こうして生産性が落ちた組織が増えると、失業はなくなるかもしれないけど、国家経済は衰退して飢饉とか貧困とかインフレが起きて「少ない給料」になり、生きるために「楽じゃない仕事」を誰かが強制されることになる。そして「少しでも楽な仕事で少しでも多くの給料」は悪徳官僚など、ごく一部の偉い人だけが恩恵を受けている状態になり、へんな社会が実現する。
朝鮮半島にある社会主義人民共和国なんかは、今もそんな社会だと思う。
でも一方で資本主義の不平等さというのもまた自明で、資本を持つ者が、持たざる者に対して圧倒的優位に立つという社会だ。資本を持たなくても、体力・知力・政治力に秀でている者が、経済的に弱者を支配することができるというルールになっている面もある。
だから富の再配分とか、弱者救済とか、より多くのみんなが幸福になるような工夫は必要だし、機会平等を維持する努力はとても重要だ。そして私は、社会全体が高い生産性を実現してこそ、手厚い弱者救済ができると思っている。
でも、こういう考え方って、ネオリベなんだろうか。そもそものfromdusktildawn氏のエントリー中でネオリベが強調されているんだけどhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E8%87%AA%E7%94%B1%E4%B8%BB%E7%BE%A9:Titleによると、「福祉および公共サービスの縮小」がネオリベの特徴の1つとなっている。だから私が過去に書いてきた文章には「ネオリベ&セーフティネット福祉の並行推進派」とか、ちょっと回りくどい表現なんかも使っている。
下記エントリーにいたっては、中国がネオリベになってしまっているが、こうなってくると何がなんだか分からない。
日本以上にネオリベ的な中国の環境破壊状況を知らないわけじゃないだろ?
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080806/1217994089:Titlehttp://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080806/1217994089:Bookmark
ただ、まあ呼び名はどうだっていい。大事なのは実態だと思うので続けよう。
そして、やっとここから本題。「経営がわかっている労働者と、わかってない労働者の格差が拡大していく理由」っていうfromdusktildawn氏のタイトル部分についての答えだけど、すごく単純だと思う。
- グローバリゼーション
- オートメーションの進化
- 多品種少量生産
- 第3次産業の増加
前3者はどれをとっても、先進国においては単純労働者が余る社会になる。グローバリゼーションで単純労働による生産財は、途上国の安い賃金との競争で淘汰される。オートメーションで工場から単純労働が減る。多品種少量生産になると、1つのプロダクトの製造は従来より小規模なチームとなり、必要とされる単純労働は相対的に減り、商品開発やマーケティングやリーダー・マネージャの比率が高くなる。
最後の第3次産業には単純労働は多くあるけど、「第3次産業の単純労働」は極めて労働集約的で生産性が低く、低賃金な職しかない。
どの先進国でもマネージメント力を持った人材は不足していて、単純労働者が余剰になっているのだと思う。
そして、価格の硬直性あるけれども需給関係において、単純労働者の賃金は下がり、高技能な労働者の賃金は上がる。そして「経営がわかっている」は、その中の1つのパターンに過ぎないと思う。別に経営がからっきし分からなくても、例えば超高度なプログラミング能力があれば、アホな経営者の下でないかぎりは高賃金で働ける。
もちろん「経営がわかっている」は広範囲に活用できるスキルだし、いろいろな意味で私も勉強することをお勧めするスキルだけども、これってネオリベ*1とはそれほど強く関係ないと思う。
別に高福祉社会であっても、みんな、特に経営者やリーダーが経営力を高めることで、短い労働時間で、高い生産性を実現できれば、ハッピーな世の中だと思うんだけど、どうだろう。
グローバリゼーションが進み続けている世界経済で、他国に負けず、豊かで住みやすく働きやすい社会を作るには、やっぱり自由競争で切磋琢磨して生産性を挙げていかなければいけないけど、そのためには「経営がわかっている労働者」が多くいた方がいいだろう。
こういう結論のエントリーはあんまり好きじゃないんだけど、結論はfromdusktildawn氏と一緒かもしれない。
ドラッカー嫁。
(いずれ全巻読もうと思いつつ、他にも読みたい本がいっぱいありすぎて、なかなか進まない)
P.S.
先日の読者プレゼント、tangent 様が当選いたしました。おめでとうございます。それにしても応募者がいて良かったw。ありがとうございます。
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