はてなは大丈夫?/Google Newsが米ユナイテッド航空の株価を一瞬で1/4へ下落させた件

下記のホッテントリーを見て、驚きと共に恐怖を感じた。

一昨日、ユナイテッドが倒産したという6年前のニュースがまるで今のことのように流れ、そのせいでユナイテッドの株価が76%下落するという事件がありましたが、これがなんとGoogle Newsのせいであった、という話が浮上。

(中略)

1.9月7日の朝1時に、The Sun Sentinelのサイトで2002年のユナイテッド航空倒産のニュースを読んだ人が一人いた

2.真夜中だったので、ローカル紙のビジネスセクションを読んでいる人は殆どおらず、このたったの1ページビューにより、6年前の記事が"Popular Stories Business: Most Viewed"のタブの下に登場することになった

3.これをクロールしたGooglebotが、「最新のニュース」として、当日の日付でGoogle Newsに掲載

http://www.chikawatanabe.com/blog/2008/09/google-news75.html:Titlehttp://www.chikawatanabe.com/blog/2008/09/google-news75.html:Bookmark

(引用原文中「2.」が2箇所あったため、「3.」へ改変)


この話題、探してみたら翻訳記事のWSJITmedia)、CNET(ライブドアニュースにも載る)とロイターではネットで出ていたようだが、国内では特に大きなニュースにはなっていなかったように思う。


でも確かに2008年09月08日の米ユナイテッド航空(UAUA)の株価を調べて見ると、株価は昼を挟んで短時間で急降下した後に急上昇に転じていて、下記のような値動きになっていた。

始値 高値 安値 終値
$12.17 $12.45 $3.00 $10.92


これって、国内ではあまりニュースになっていなかったけど、将来下記のような専門分野では教科書に載るような大事件ではないだろうか。*1

1つは情報システム学の分野。外部連携をする完全無人の情報自動処理プログラムにおけるリスク。それに対抗するテスト、フェイルセーフ設計のあり方。他にも、情報と時刻の関連付けの重要性など。

2つ目は経営学の分野。権威あるウェブサービスを運営に伴って発生する責任の重大さ。リスク管理について。

3つ目はメディア(マスコミ)学。Google Newsのような新種のメディアの登場とその影響。是非、改善方法について。


また、今回の件はメディアに載るコンテンツの問題であったけど、今更ながら怖いなと感じたのは、ネットというメディアそのものの品質への不安もある。これはセキュリティーの問題で、例えばYahooやGoogleのようなサービスが改竄されたり、もしくはある程度広範囲にDNS乗っ取りの被害を受けて偽ホストへと誘導されてしまうと、やり方によっては凄く大きな影響力を持ち、十分テロの対象にもなりうるということ。

また株価を乱高下させて企業価値を傷つけるだけでよければ、企業サイトのIRページを書き換えることでも、大きなダメージを与えられてしまう危険性も高い。


そして、Google Newsの今回の件で一番本質的な問題は、Web2.0マッシュアップとか喜んでばかりはいられず、WebAPIを叩かれたり、ネットで外部連携をしている部分で、とんでもない情報を権威ある目立つ場所に送りこむことになった場合は、もの凄く大きなトラブルを背負い込む可能性があるということだろう。


さらに言えば、こういった問題に対して、日本で一番危険なポジションにあるウェブサービスは「はてな」ではないだろうか。今回のGoogle Newsのようにタイミングに起因して発生する問題はないかもしれないが、悪意による攻撃の可能性もあれば、ユーザによる誤謬の可能性もある。

例えば、某国の工作員(反政府勢力?)、もしくは国内のテロ的組織が、そこそこの数の「はてなID」を取得して、まあアクセス元IPアドレスも散らして、普通に一般のユーザのフリをしているんだけど、ある日突然、テロ行為に出るとする。予めmainicni.jpとか、まあ混同しやすいドメインを用意しておいて、偽サイトに偽記事を上げて、ある程度集中的に「はてブ」する。

仮にこれが「北朝鮮、ソウルへの侵攻計画が秒読み段階。弾道弾ミサイルに燃料注入の可能性」みたいな偽記事だったらどうだろう。

まあ、賢明なブックマーカードメイン名の相違に気づけばいいんだけど、なんだなんだと野次馬的なブックマークがついてしまうと、ホッテントリーになって、まずは「はてなのトップページ」にそのまま出てしまう可能性が高い。そうして「北朝鮮 ソウル侵攻」というキーワードでもGoogle検索のトップに出てしまう。当然、他のメディアで裏付けを取ろうと考える常識人が多いだろうけど、予めSEOを施した準備をしておいて、偽新聞記事あと9つがGoogle検索のトップ10全てにランクインしていて出てきたらどうだろう。こういったことをキッカケに、瞬間的に東証全面ストップ安みたいな事態を引き起こしたり、他にも大きな社会混乱を引き起こせるような危険性は、ちゃんと排除できていると言えるだろうか。

杞憂だといいけど、いかがだろう。

*1:他にも経済学分野で、ネット時代の情報伝達による市場の動きという観点もあるかもしれないけど、本質的には誤報に限って観測できることはそれほど多くないと思ったので省略。