社会保険料とFlypaper theroy

分裂勘違い君のエントリー空気読まずに暴走したり、具体的に書いたらいぢめられたりした関係もあって、こだわりの「Flypaper theroy」についての続編。*1

こんどは社会保険料負担の話しで、経済学的にも典型的な例になっていると思う。

 法人税減税を行う場合に必要な最低条件は、他の先進国と同程度の水準まで社会保険料を増やすことではないか、と私は考える。当然のことながら、低所得者層への配慮は不可欠である。労使折半が原則となっている社会保険料負担も事業主負担をより引き上げるべきではないか。

 経団連の主張は、法人税減税、消費税増税、年金を税方式に切り替えた場合、企業主権国家になり、格差社会がどうしようもないところまで行き着くのではないかという危惧している。
http://d.hatena.ne.jp/zundamoon07/20080921/1222005114:Titlehttp://d.hatena.ne.jp/zundamoon07/20080921/1222005114:Bookmark

上記エントリー、朝日の紙面からの引用もあり、いろいろとリファレンスも充実していて、すごく有意義な情報が多いのだけど、上記引用させて頂いた部分には賛同できない。

仮に社会保険料の事業主負担を増やしたとしても、労働市場が完全競争市場的であるとすると、下記グラフで説明されるような形となってしまい、これもFlypaper theroyの1つで、おそらく望む方向へと行かないと考えられるからだ。

ここで、正規雇用労働者という財を取引する完全競争市場があって、青は需要曲線で買い手側(企業)が高い賃金だと少人数しか正規雇用せず、安い賃金だと多くの人数を雇用する形になることを説明している。一方で赤は供給曲線で、低い賃金だと正規雇用を望む労働者は少ないけど、高い賃金だと大多数が正規雇用を望むという曲線になっている。*2

ここで紫のポイントで需給が一致しているのを今の日本の状況とする。そこへ事業主負担・被雇用者負担のいずれであっても総額で緑の矢印の長さに相当するような社会保険料負担を追加で発生させるとすると、需給のマッチングはピンクの点へ移動する形となる。

増加分の負担は実質的には企業と労働者の両方の負担となって、グラフを「下のピンクの点」へ下方向へ進んだ分だけ労働者の手取り額も減ることになり、グラフを左へ動いた分だけ正規雇用者は減るという形になる。

正規雇用マーケットは完全競争市場じゃないので、この通りにはならないと思うけど、大雑把には方向性は似るだろう。ただ、企業は現行の社員のクビを切るようなことは従業員全体の士気を下げるからやりたがらないし、給与には下方硬直性がでて企業側の負担が増える形にはなると思う。しかしながら、その分のしわ寄せは正社員の新規採用に大きく影響し、今以上に現行の非正規雇用者を苦しめ、現行の正社員の既得権を守るバイアスがかかると思う。

というわけで、この政策は非正規雇用者と正規雇用者の格差を大きく拡大する方向に働くと思うので、やめたほうがいいと思う。


ちなみに何回か書いているのだけど私は日本の大きな世代間格差を埋めるためにも高齢者からも徴税できるという意味で消費税、それも擬似リフレ効果を狙って毎年1%づつ増税をするといいと思っている(日用品は免税にする)。あと低率でいいので輸出付加価値税(輸出品にも消費税)の課税。ワーキングシェア政策として、一定条件を満たす高収益輸出大企業の残業を厳しくチェックして一定時間を越えたら罰則的法人税を課す制度を作る代わりに、解雇権の強化を認めると良いと思っている。

富の海外流出は多少は仕方ないのではないだろうか。日本に足りないのは企業資本や貿易黒字ではなく、雇用や有効需要であったり税収だと思う。

P.S.
zundamoon07さん、へんな議論の流れで批評してしまい申し訳ありません。何か不都合な点がありましたらご連絡下さい。

*1:ちょっと粘着気味だけど、知的奇心的にも楽しいのでつづけます。ちなみにマンキュー経済学はまだ読めてないけど、いずれ本当に読もうと思っている

*2:多分、こういう説明は古典派の図なので、今の経済学だともっと本質に沿うような説明をすると思うんだけど、ここでは雰囲気だけ説明するということでご容赦を。あと曲線の傾き/価格弾力性もかなり適当