民主党のアホな外貨準備論の件

下記の記事を読んで、民主党大塚耕平氏は3重にアホじゃないかと思った。

また同日記者会見した大塚議員は、外為特会が抱える100兆円規模の外貨準備の国内総生産(GDP)比を現在の約20%から「少なくとも半減ぐらいを目指すべき」と主張した。同GDP比を10年間で10%に低下させることは可能とし、財源に活用できるとの考えを示した。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/081002/fnc0810022047015-n1.htm

その1:日本の外貨準備は、ほとんど政府の借金だよ

外国為替資金特別会計平成18 年度財務書類(PDFファイル)
http://www.mof.go.jp/jouhou/kaikei/zaimu/200331/k.pdf

平成19年3月31日時点と若干古いけど、上記の決算書類によると、外為特会は総資産119.8兆円で負債が103.4兆円。確かにストック側にも16.4兆円の純資産的なものがある。ただ、残りの大半が政府短期証券っていう短期国債による借金を元手に外貨準備を作っている。率で言うと86.3%が借金なのだ。

なんでこんなに外貨準備を作ったかと言うと、為替介入で円売りドル買い介入をバンバン続けて円安を維持して輸出企業を助け、輸入資源価格の上昇で苦しむ庶民、漁師さん、運送業、輸入関連企業などなどは助けなかったからだ。

でも、調べてみたら大塚耕平氏は元日銀マンだったので、そんなことは当然知ってるはずだ。そうすると、どうして冒頭引用のような誤解を招きかねない記事が出てくるのか不思議だ。ロイター記事も「ストックをスライスして減らす中で埋蔵金として使える」との発言を引用しているので、これは100兆規模の外貨準備を半減すれば50兆円もの財源が出てくるというようにミスリードを狙った発言と考えるのが妥当だと思う。

でも、なんで起業系ブログでid:itoshiki氏とかid:AntiSeptic*1みたいな罵倒をしなきゃいけないんだよ。記者さんっていうのは、記者会見で質問したり、こういう発言の報道記事に注釈を入れてミスリードを防ぐのが仕事だろうよ。財源なしのバラマキ政策を標榜した政党が政権取って、日本経済をグダグダにしてくれたら、どう責任取ってくれるんだよ。マスゴミさんよ。

その2:日本の外貨準備の大きさは問題だけど論点が違いすぎる

『外為特会が抱える100兆円規模の外貨準備の国内総生産(GDP)比を現在の約20%から「少なくとも半減ぐらいを目指すべき」』という主旨自体は私も賛成だが、これを半減する過程で財源が捻出できると発言しているところが、元日銀マンなのに痛い。

ほとんどがドル資産で100兆円規模だ。これを円高ドル安を誘発せずに市場で売れると思っているのだろうか。どれだけ為替ヘッジをかけているかは分からないけど、規模的に無理なのと3%から4%程度の運用益を出しているところからも想像すると、為替ヘッジはほとんどできてないだろう。そして、日本が外貨準備を意図的に減らし始めたら、年間平均5兆円ペースに抑えても必ず先回りして円を買う動きが加速して、円高ドル安になる。

先に述べた通り、外貨準備の原資は86.3%が借金で純資産相当は13.7%しかない。そうすると、外貨準備削減の方針発表から簡単に派生する15%程度のドル安で外為特会は債務超過転落。一般会計から補填をしなければいけない事態となる可能性が高い。

というか、外貨準備を削減しなくても、今の米国経済危機で、1ドル110円が93円(15.4%の下落)なんてことは、アッサリと起ると思う。

つまり、今この経済情勢で外為特会に埋蔵金があるなんて喜んでいるのは、よっぽどの楽天家であって、言うなればアホだ。問題は、日本政府が100兆円規模でFXのようなことをやっていて、巨大なリスクを背負ってしまっていることだ。そして、最大の問題はその投資先の米国が青息吐息で、ドルを売るに売れないってことだ。

その3:米国発の世界的金融危機が起きているタイミングで...

大塚氏はロイターによると「(ドル売り・円買いを)いますぐ大々的にやることは必ずしも適切ではない」とも言っている。

でも少々フォローをしたところで、この米国発の世界的金融危機が起きている最中に、ドル資産中心の100兆規模の外貨準備を、長期スパンとはいえ半減させるべきという発言は、政権を担おうとしている政党の「金融対策チーム座長」さんとしてはありえないだろう。*2

今、ドル安を誘発するような発言は、金融対策的には絶対NGだ。目先のバラマキの原資に気をとられて、世界経済にダメージを与えて国民生活を脅かそうとしている点は言い逃れようができないアホだ。

「短期的にはマーケットの安定化を考慮して運用するが、長期的には日本企業の米国投資を促進し、マーケットの許容範囲で削減することが望ましい。」ぐらいが妥当で、時期や規模を明言するとヘッジファンドの為替攻撃のエサになって大損するのがオチだ。

まとめ

日本のマスコミはアホで、大塚氏は2重にアホだった。勘違いして冒頭で1つ余計にカウントして申し訳ない。若いから大丈夫だと思うけど、民主が政権取っても、くれぐれも大臣とかにはならないで欲しいなぁ。

*1:最近、ふと「文化レベルが高すぎます」(2007-09-12から2008-02-27の更新)のid:itoshiki氏と、「消毒しましょ!」(2008-04-09からカレント更新中)のid:AntiSeptic氏の芸風や嗜好性が似ていて同一人物っぽい感じがしたので併記してみました

*2:ゴルゴ13だったら、CIAが動いて日本の民主党に政権を取らせないように妨害工作が起るよw