橋下知事より朝日が痛いと思う

私は、あまりテレビは見ないのだが、例の橋下知事光市母子殺害事件弁護団への名誉毀損で一審敗訴になった発言をした「たかじんのそこまで言って委員会」は偶然ながら視聴していた。

番組中の発言詳細は探したら「テキスト起こし」が見つかったので、末尾に引用するが、印象としては橋下弁護士また威勢よく吼えてるな、といったぐらいで、番組内容まで踏み込んでみると下記のような社説を載せる朝日新聞*1というのは、まあアサヒるってまでは言えないけど、相当の悪意をもって書いているとしか解釈できず、少なくとも一流紙が書く社説ではないと感じる。

(前略)

そもそも橋下氏は、みずから携わってきた弁護士の責任をわかっていないのではないか。弁護士は被告の利益や権利を守るのが仕事である。弁護団の方針が世間の常識にそぐわず、気に入らないからといって、懲戒請求をしようとあおるのは、弁護士のやることではない。

(中略)

橋下氏は判決後、弁護団に謝罪する一方で、控訴する意向を示した。判決を真剣に受け止めるならば、控訴をしないだけでなく、弁護士の資格を返上してはどうか。謝罪が形ばかりのものとみられれば、知事としての資質にも疑問が投げかけられるだろう。」

テレビでの橋下氏の発言は、「世間の常識にそぐわず、気に入らないからといって、懲戒請求をしようとあおる」って言われても仕方ない場面もあるにはあるが、あとから「一審で出ていれば仕方ない」というフォローも入れていて、弁護人の入れ替わりと同時に、弁護サイドの主張が大きく変わることを問題視している点を強調していて、単純に弁護団の方針が気に入らないなら懲戒請求をしようと言っているわけではないのは明らかだ。

一方、もしも発言詳細を確認せずに社説を書いたのであれば、やはり一流紙の社説としてはありえない行為で、朝日は三流紙ということになる。Q.E.D. 証明終了。(と言いつつ、つづく)


まあ毎度の朝日はさておき、橋下氏の番組中の発言は明らかに間違いを含み、また懲戒請求についても配慮が足りない発言だと思うし、名誉毀損の要件は満たしていると思うので、賠償を認めるという判決も妥当だと思う。

弁護行為が報道や多数派の意見で妨害されるようなことがあっては大問題だと思うし、ここ最近の朝日に言及する発言についても、橋下氏も知事なんだから大人げないこと言うなよなと思う。


でも、47NEWSの判決要旨にある「被告は、原告らが差し戻し前に主張しなかったことを主張するようになった経緯や理由を、一般市民や被害者遺族に説明すべきだったと非難するが、訴訟手続きの場以外で事件について発言した結果を予測することは困難であり、説明しなかったことも最善の弁護活動の使命を果たすため必要だったといえ、懲戒に当たらない。」という部分こそ橋下氏が繰り返しテレビで主張した内容へ触れている部分である一方で、微妙な判決文となっているところだと思う。

判事が橋下っちゃんを嫌いというバイアスがかかっているのかもしれないが、ここは弁護団が「懲戒請求をされても仕方ない」という状況にあったことが言えれば、橋下氏の不法行為は減るわけで、氏が謝罪しつつも控訴するような争点はあるとも考えられるし、控訴しなければ弁護士として名が廃ると考えても、さほど不思議はないと思う。


何にせよ、三流紙は一審判決を鵜呑みにして(したふりをして?)鬼の首を取ったような社説を書いて控訴権を軽視する一方で、キレやすく失言体質の知事が、また言っちゃったってことで、どっちもどっちという結論だと思うが、個人的にはこれはマスゴミ、朝日の方がより「痛い」と思う。

ちなみに、finalvent氏もこのように書いている。

http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20081003/1222989187
この件まったく知らないし関心ないけど、これってまだ地裁じゃないの。社説なんだから、せめて高裁くらいで言及したらいいのではないのか。

以下、問題の放送の「テキスト起こし」抜粋

下記サイト末尾より部分引用
http://nanashiotoko.blog75.fc2.com/blog-entry-108.html

たかじんのそこまで言って委員会
5月27日放送分の光市母子殺害事件の議論のテキスト起こし(敬称略)

(中略)

たかじん 「まずね、そういう場をね、死刑廃止論者の弁護士の談合の場所にしたらいかんよ(宮崎 「その通りです」)。はっきりいって。なんとっかっつっちゃ(管理人注:よく聞き取れず)。おら、アホ。なにがおまえ生き返ったら、中に精子入れたら生き返るって、どういうこっちゃ。ほんなもん、18の人間、17だろうが18だろうが、そんなもんはな、そんな言い訳をやね、仰山、二十何人も集まりやがって(宮崎 「21人」)、21人も集まりやがってお天道様に向かって、お前らほんまそんな事、真剣に言える思ってんのか。馬鹿者。(カメラに向かって)出て来い。一人で相手したらあ、俺が。きみ、どう思う」

橋下 「いや、もうね、残念というかね、弁護士っていうのもこんなもんなのかなと。で、あの21人のあの弁護団の中で特にあの安田っていう弁護士はねえ、あれホント弁護士バッチとらないといけないはずなんですよ。というのは、光市のもともと最高裁の弁論っていう期日をですね、日弁連の模擬裁判の何かリハーサルがあるっていう事で欠席してるんです。(たかじん 「でなかったやろ」)出なかったんです。もうFAX一枚最高裁のほうに流して。で欠席したと。で、それに関して広島の弁護士会のほうは、安田って弁護士じゃない広島のほうの担当の弁護士ですかね(管理人注:足立修一と思われます)。懲戒事由にあたらないと。あれも一つの弁護活動だという事で懲戒棄却してるんですね。いったい弁護士が懲戒されるって事はどういう事やねんと。たかじんさん言ったようにね、死体を蘇らす為にその姦淫したとかね。それから赤ちゃんにあの、子供に対してはあやす為に首に蝶々結びをやったという事を堂々と21人のその資格を持った大人が主張するっていう事、これはね弁護士として許していいのか」

宮崎 「弁護士というものをね、世の中の評価をどんどん下げてる。(橋下 「もうあれこそね、非行っていう…」というが宮崎続ける)これね、何が問題かっていうと、この証言っていう、まあようするに当人が言ってるからこういうふうにやってるんでしょうけど、一審・二審では全く出てません(橋下 「言ってないんです」)。突然出てきてるわけ。突然出てきて、当人しか知りえない事実であるわけですよ。こんなん誰が信用しますか。こういうものを、こういう最後の最終審近くになって出してくるっていうのは、まさにね、私は被疑者、被告人当人のためにもなっていない。これは明らかにね、政治運動ですね」

橋下 「だから一審・二審で仮にそういう主張が出てたら、これはもう弁護人としてはやむ得ないところあります。あの、国家権力に対して唯一その被告人を代弁するという事で言わざるおえないんですけど、明らかに今回はあの21人というか、安田って弁護士が中心になってそういう主張を組み立ててる、組み立てたとしか考えられないです」

宮崎 「安田さんはね、もう長い間ずっと死刑廃止運動やってる人なんですよ。それはそれでいいです。私も死刑廃止論には耳を一部傾けるところもある。そういうのはね、裁判所の外でやるべき事であって、立法府に働きかけるべき事でしょう」

たかじん 「道具の一つとしてね、使ってるようにね、見えてしまうところがあるんですよ」

森本 「(橋下に向かって)弁護士ってのは一回なってしまうとさあ、ずっと弁護士なのね(橋下 「はい」)。裁判官の場合はいろんな、そのいわゆる審判を受ける機会とかあるんだけど、弁護士っていうものを公的にその資格を奪うっていう方法はないんですか、一回なってしまったらずっと永久に資格があるという制度がおかしいんでね」

橋下 「弁護士自治といって監督官庁がないんですよ。で国家権力と戦うって事で。それが弁護士会が唯一懲戒権を持っていて。でぼくね、ホントね、テレビ使わさしてもらって、もしカットされたらもうしょうがないんですけど、是非ね、全国の人ね、あの弁護団に対して、もし許せないって思うんだったら、一斉に弁護士会に対して懲戒請求かけてもらいたいんです。今、弁護士会のほうに一人の弁護士に、まあ、ぼくなんか何十件もやられるんですけど、二件・三件来ただけでもう弁護士会大慌てなんですよ。是非ね、懲戒請求ってのは誰でも彼でも簡単に弁護士会にいって懲戒請求立てれますんで、何万・何十万っていう形であの21人の弁護士の懲戒請求立ててもらいたいです」

勝谷 「どうせね、大新聞やテレビはヘタレだろうから、ようせんだろうから週刊誌は21人全員の顔写真と名前と過去にどういうのにかかわってきたか、出したったらええねん。ついでに住所も書いたれ(会場から拍手が起こる)」

辛坊 「(資料を見ながら)弁護団の主張なんですよ、こういう主張なんですがね。『ドアをあけて招きいれてくれた被害者を、被告人の亡くした母親ととらえ、被害者に抱かれた被害児を被告人の二歳年下の弟ととらえ、さらに死亡させた被害者の遺体を、自殺して横たえられている数年前の母親の遺体ととらえた、母子一体ないし母体回帰の事件である』。こういう事をね、法廷で聞かされる被害者遺族はどう思うよ」

勝谷「そのとおり。亡くなったそのお母さんやなんかの事もこれは誹謗中傷してるわけで。本村さんにしたら、よけい被害者。タフな人だから彼はあれだけど、普通の人だったらもうそれで第二の陵辱を遺族は受けたに相当しますよね。これね、ホントにね、精神的苦痛をそういう主張で受けたという事で訴えられないのかね」

橋下「だから、一審でもし言ってたらですよ、一審で言ってたらこれしょうがないんですよ。だからそうであればね、法廷でなぜ一審・二審で言わずに、この差し戻し審になって初めてそういう主張したのかって事をきちんと説明しないと。あれもう訴えるもなにも、だから懲戒請求でほんと一万・二万・十万とかこの番組見てる人が、一斉に弁護士会にいって懲戒請求かけて下さったらですね、弁護士会のほうとしても処分出さないわけにはいかない」

森本「それおかしいね。だいたいその弁護士の資格ってのはどうやって作るかというと、個人のまあなんていうかな、品格とか人格とか能力とかっていうものとは別に、全く筆記試験で通るわけでしょう(橋下「そうです」)。だから、そういうその人間としてその異常なっていうか、人間として最低レベルのその人格しか持ってないっていうような、仮にそういう人がずっと弁護士活動ができるっていう制度そのものがおかしい」

(以下略)

2008.10.24 誤字修正