モンティ・ホール問題とかベイズ推定とか

藤沢数希氏の金融日記にあった、「トレーダーの適性テスト #1」。こちらの回答が公開され、コメント欄が荒れ気味なので、何かコメントを書こうと思ったのだけど、長くなりそうなのでトラックバックを送りつつエントリーを書いてみることにした。

以前にその数学が戦略を決めるという本の書評がてら書いたが、個人的にベイズ推定に興味があるのと、そもそも計算してギャンブルに勝つことが好きな性分なので、こういう確率の話は大好きだ。

というわけで、まず以下に問題と回答を引用する。

さて、問題です。 トレーダーの適性テスト #1 : 金融日記
AとBとCのみっつの箱があって、そのうちのひとつに宝が入っています。
神様があなたに「どれかひとつ開けてもいいよ」と言いました。
そして、あなたはAを選びました。
すると親切な神様は「BとCではCはハズレだよ」と教えてくれました。
さて、あなたはAをそのまま開けますか?
それともBに変えますか?


一応、回答を考えたい人のために、途中に話を挟んでみると、こちらの問題は、米国のTV番組に由来して、モンティ・ホール問題(末尾参考リンク)という名前がついていて、そこそこ有名な問題のようだ。私は、確か下記の本の冒頭に載っていたのでそれで知ったと思う。

行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

(完全に余談だけど、この本は新書なので内容的には基礎的な話のみになるが、今の経済学の先端の1つである行動経済学について面白い話がいろいろ書かれていて、オススメできる本だと思う。)


さて、本題に復帰。以下が金融日記さんの回答。

トレーダーの適性テスト #1 (模範解答) : 金融日記
AとBとCのみっつの箱があって当たりはひとつ。
何の情報も得ずにひとつを開けるとすると確率は3分の1。
しかし、Aを選んだところで、BとCではCがハズレだと言う新たな情報が分かった。
この情報は美味しい。
なぜかと言うと仮にBとCを両方開けることが出来るなら当たる確率は3分の2。
しかし、新たな情報によりBとCでは、Cがハズレだと言うことが分かっている。
よって、Bを開ければ、それはBとCを両方開けるのと同じことなので当たる確率は3分の2。
Aをそのまま開ければ当たる確率は3分の1のまま。
よって、答えは確率的に2倍も有利なBを開けるが正解。


この問題について、何も考えずに回答すると、AもBも同じ1/2の確率になると直感的に考えてしまうことが多いと思う。しかしながら、この違和感がある正解は、ある条件下においては正しく、Bが当たりである確率の方が2倍高いことになる。

このような結果が成立するには、神様が「BとC」に注目して、下記のようなことを教えてくれているという前提が存在している。

  • 「A」が当たりの場合は、「B」と「C」のいずれかを「ハズレ」として教えてくれている。
  • 「B」が当たりの場合は、「C」を「ハズレ」として、正確に教えてくれている。
  • 「C」が当たりの場合は、「B」を「ハズレ」として、正確に教えてくれている。

この神様が、単に任意の「ハズレ」を教えてくれているだけあれば、残る2つの選択肢は、それぞれ1/2の確率で当たりとなる。しかし、神様は「B」が当たりの場合は「C」をハズレと教え、「C」が当たりの場合は「B」をハズレと教えるという形で明確な情報を提供してくれているのだ。ただ、正解には直結するのは元々「BとC」のどちらかに当たりがある場合に限るため、2/3の確率ということになる。

これを現実問題に置き換えると、A社・B社・C社が大型プロジェクトの受注競争をしていて、各種情報から受注確率は対等で1/3づつであると予想されたが、別の情報でB社はC社より絶対に優位であることが判明し、C社が競争に勝つ確率がなくなったというような話になるので、もうちょっと理解しやすいかもしれない。

ここでは、A社と、B社&C社の間ではアプローチ方法が異なるため後者情報では比較できず、後者情報を加味してもA社の受注確率は変わらないというのが前提となる。

他にも、後者情報が恣意的にもたらされていないか、神様は毎回この情報を提供してくれるのか、という点でも独立性の問題はある。神様が、こんな親切心を起こす確率が「A」が当たりの場合だけ高い(いじわるで親切心を起こす神様である)可能性を考慮しはじめると、へんな神経戦になって確率は1/2が正解になると思う。*1


ちなみに、モンティ・ホール問題は、FIFTH EDITIONさんのちょっと古いエントリーでも、Wikipediaでもベイズ推定との関連で掲載されていて、おそらくは事後確率の分かりづらい例として考えれば、ベイズ推定の1つの例題として考えることができると思うが、本質的な部分としては双方の理解を難解にしているだけのような気もする。

ベイズ推定については勉強してみたい欲がありながら、Wikipediaを読んで、いくつかの計算例は理解したものの、本質的な理解はまだまだの状態だ。特にベイジアンフィルタについては、どういう意図で何をどう計算しているか理解できていない。Wikipediaもまだまだ読み込めていない(ベイズって奥が深い)ので、何かの際にもう一度勉強しようと思う。何か良い入門書をご存知の方があれば、ぜひ教えて下さいませ。

(思いついたときに勉強できるようにという自分用メモの意味も含めて、Wikipediaへリンク)

*1:そもそも金融日記さんの問題に「親切な神様」とあるのは、ここらへんのことを考慮した問題設定だとしたら、すばらしい