FRBのケチャップ買いの件

ケチャップと言えば、どうしてもid:Baatarism氏のブログデザインを連想してしまう。それはさておき、池田信夫氏の下記のエントリーから、FRBのケチャップ買いの件について。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/6ee8453127a32a36c7722e79bcc294f1:Title
植田和男氏によれば、非正統的な金融政策には次の3種類がある:

  1. インフレ目標
  2. リスク資産の大量購入
  3. 量的緩和

(中略)


ただ、かつてバーナンキ自身が日銀に「ケチャップでも何でもいいから無限に買え」と提言したので、こういう政策をとる可能性はある。上の3つの政策のうち、2だけが日銀があまり大規模にやらなかった政策なので、理論的には成功する可能性はある。FRBがケチャップを買うのは見たくないが・・・

そう、FRBはさすがにケチャップは買わないのだけど、AIGに特別融資をしたり、特別機関を設立して社債を購入したりGSEファニーメイフレディマック)の保有するMBS不動産担保証券)を5000億ドルまで買うことを決めたり、リスク資産の大量購入を行っている。

FRBが資産を購入すればドルがどんどん刷られる*1わけで、資産の大量購入と、量的緩和はウラオモテの関係にある。だから「2」「3」区別は、つきつめると、どこまで「リスク」に踏み込むかという話しであったり、FRBがどこまで信用を提供するかという話になる。

また、資産の大量購入が「最後の貸し手(Last resort)」機能ということであれば教科書にも載ってる*2伝統的な対応になる。ここでは、他に買い手が存在しないときに必要最低限の資産購入を行っているか、それとも他に買い手はいるにもかかわらず積極的に買い進んでいるかというところがポイントだ。

現在進行形であり米国の話しで情報が少なくて見極めは難しいのだけど、ここ最近のFRBの動きを見ているとシティ救済もあって、かなり大雑把だけど下記のような感じではないだろうか。

2008年 8月 9月 10月 11月
最後の貸し手 △/◎
量的緩和
リスク買い・保証 △/○


FRBはリーマンを救済せずに破綻させたし、AIGは救済しつつも株主価値を大きく落とした。しかし、シティ救済は株主価値を大きくは毀損しないようなスキームになっているし、FRBの保証範囲にまでダメージが及ぶ可能性は低いだろうけど、シティの不良債権の3060億ドル(約29兆円)についての保証を一部FRBが提供している。

こういったところを踏まえての、私の関心ポイントは、以下の通り。

  1. これだけの金融緩和。また今後も出てくるであろう米政府の財政出動などを踏まえても、米国景気を回復軌道へ持っていくことができるのか。
  2. できたとして、米政府債務の増大や、FRBリスク資産の膨張を踏まえて、インフレやドル安の進行はどれぐらいになるのか。
  3. できなかったとして、流動性トラップに陥った米国経済はどうなるのか。


もしも神様がいて、今の経済情勢を全部見通せることができれば判断できるだろうけど、現在すでにハッピーエンドが存在しないシナリオに突入している可能性もあるのではないだろうか。つまり、この金融危機を招いた前提のバブルが大きすぎて、金融政策で無理に脱出しようと考えると、余計に大惨事に陥るという状態だ。

例えば、無事に景気回復したとしても、増税しない場合はこんな感じのパスになるだろう。「インフレ抑制のため金利アップ→米国債の利払い負担もあり財政赤字がどんどん増える→米国債が暴落→FRB米国債を買い支え→ドルがじゃぶじゃぶ→ドル暴落&インフレ」

これに対抗するには、失業で労働力が余ってしまったり、倒産で高い生産性を実現していた企業を失うというダメージは受けるけど、そういったダメージを最小限する金融緩和を行いつつも一旦バブル部分を除いた経済規模になるための調整期間を置いてから、中規模な財政出動流動性トラップを脱出するルートしかないのではないだろうか。

ここでの違いは、経済が縮小調整するまで、財政出動を温存することと、あまり巨大な規模にしないところになる。

私は経済学はシロウトなので、今すぐ全力脱出ルートを通ってもドル暴落の心配はないことは当然だったり、待てば待つほどダメージが大きく脱出できなくなる危険性があることが常識であって、見当違いの心配をしているのかもしれないけど、ここらへんを上手く説明してくれる神様みたいな経済学者はいないものだろうか。


関連エントリー(つづきはいつやねんというエントリー含む)

*1:厳密には本当にドルを刷っているわけでなくて、銀行の準備預金が増える

*2:少なくともこれには載ってた。

マンキュー経済学〈2〉マクロ編

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