田中先生へのご回答/雇用流動化論とか米国の経済対策とか

田中秀臣先生(id:tanakahidetomi)の下記記事に、ブックマークコメントをつけたら、「なんで?」と質問を含むコメントを頂きました。

所詮100字コメントというころからも多少論点がずれているところもありそうで、議論とか論争をする意図はありませんので、単に質問に対して私の考えを述べるエントリー*1になりますが、お返事をしようと思います。

以下、まずは私のブクマコメント、次いで田中先生のブクマコメントの抜粋の転載から。

確かに短期的な不況脱出の手段としてはおかしいですね。でも、雇用が非流動的であることを是認するのは、中長期の不況において若者に死ねということですし、長期的には国全体でみても多大な悪影響が出ると思います
http://b.hatena.ne.jp/T-norf/20090110#bookmark-11570721

↑T-norfという人。なんで?不況脱出はマクロでだからそれで雇用の流動性は回復されるでしょう。「長期」不況でも同じ
http://b.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090107#bookmark-11570721

まず、マクロで景気回復しても世代間の就労条件のギャップは残ると考えています。下記が多少ご参考になるのではないかと思います。(本来は所得も含めて比較するべきかと思いますが)


「雇用の流動性は回復」という点については、日本の雇用がこれまで十分に流動化したことがなくて、バブル後は問題を溜め込んでいるというスタンスです。

そして不況下で未就労・低技能職状態が続いた人の技能は向上せず、経年とともに日本の生産性を大きく落とすような事態になると思います。また、バブル後の経済停滞の結果として、みんな将来に悲観的になり、貯蓄に励み消費せず、子作りもしない世代を作り出し続けてきているでしょう。

下記は細かい裏づけをちゃんと取ってない適当なエントリーで、アカデミック分野でご活躍されている方にご紹介するべきレベルではないのですが、私の根本的な考えはこちらです。(2008年6月時点)


日本はこれだけの総貯蓄があるのに、どうしてお金が使われず、総需要不足になるのでしょう。デフレ、デフレ期待が原因だとして、ではその原因は何でしょう。単なるモーメンタム的なものもあると思いますが、その1つには、この世代間ギャップからくる将来悲観や少子化があると思います。

ただ、田中先生のおっしゃられるように、今この不況下で雇用流動化を叫ぶのは、よほど上手い制度を作らない限りは、リストラ解雇を進めたい企業サイドの思いを促進するだけになるという点は賛成です。

そして、デフレ期待が弊害なく払拭できる手段があるのであれば、それは手放しで大賛成です。インフレターゲットや金融の量的緩和は、特に今の日本ではどんどんやるべきだと思います。ただ、それをやっても、もし、中長期不況が続くのあれば、どうでしょう。

雇用流動化やワークシェアを進めないと若者がダメになり国家的には大きな損失になると思います。私がブックマークコメントに書いたのは、ここです。

そういった意味ではマクロ経済政策を、どこまで信用しているかという点でも見解の相違があり、私は先に景気を回復させてから、それから若者を救うという経路に対して困難であるというイメージを持っているのかもしれません。


そして、これは余談ですが、財政出動するとしても、結局デフレ脱却できずに大きな政府債務が残るのはもう限界です。若者サイド*2からすると、ほんと勘弁して欲しい状況になります。

政治の側面を考えると、大規模財政出動財政赤字を理由に途中でストップする危険性もあり、今後の米国が特に心配なのですが、結局は流動性トラップから脱出できない形になるシナリオも考えられ、結構なギャンブルであると感じています。

ここらへんは、後日もうちょっと詳しいエントリーを書くかもしれませんが、大雑把に言うと下記のような感じです。

財政出動/赤字、金融緩和
 →資源暴騰、(弱い)キャピタルフライト
  →ドル下落、金利上昇の板ばさみ
   →スタグフレーションと、国債利払いから財政再建バイアス
    →流動性トラップ脱出できず、デフレ継続
     →20年不況(政府債務が増えただけ)


あくまで、私は、こういう考え方をしているというだけのものですし、最後のは、賢い人達がちゃんと回避してくれれば良いシナリオなんで、あまり意味のあるものではないですが、何かのご参考になりましたら幸いです。


2009/01/10 15:00頃 誤字修正

*1:返事のコメント(notブックマークコメント)をつけようとしたら、なぜか記入できなかったので、エントリーをおこすことにしました

*2:っていうほう若くないけど