逃げずに経営的に考える

どうも、分裂勘違い君の今回の下記エントリーには違和感があって納得がいかないと考えていた。

(ついているブクマコメントが、結構ナイーブなものが多いように思えるので、もしかすると、分裂して切返してくるのかもしれないが。)

http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080417/p1:Title

「今が、戦うべき時なのか、逃げるべき時なのか」

この見極めができるかどうかで、

人生のかなりの部分が決まってしまいます。


自分を飛躍的に成長させるチャンスなのに、

それが災厄だと思いこんでそこから逃げ出してしまうと、

手を伸ばしさえすれば掴めた、きらめく未来はこぼれて、四散してしまいます。


逆に、いますぐ逃げ出さなきゃならない最悪の状況なのに、

そこにとどまって無理に無理を重ねて鬱病になると

あなたの未来は、腐って腐臭を放ち始めます。


その状況が、チャンスなのか、災厄なのかを決定づける要素として一番重要なのが、次の二つのバランスです。


(1)責任

(2)権限


(中略)


もちろん、上司は責任と権限のバランスを考えて部下に仕事を割り振るべきですが、とくに中小企業やベンチャーは慢性の中間管理職不足であるため、ろくな権限も与えないまま責任だけ押しつけるような無能な「なんちゃってマネージャ」がたくさんおり、この「責任権限バランス」がデタラメなことがよくあるのです。しかも、そういう無能な上司は自分が部下に与えた責任と権限のバランスが間違っていたことを、なかなか認めようとせず、失敗の責任を部下に押しつける傾向にあります。


このような被害に会わないためには、責任を引き受けるときには、必ず、その責任に見合った権限が与えられていることを確認しましょう。


口頭で確認するだけではあとで言った言わないで揉めますから、口頭で確認した後、そのとき決まったことを文章にして関係者にメールしておくべきでしょう。


もちろん、その責任を引き受ける段階では、まだ与えられる権限の詳細が決められないことも多いです。

そして、あとからその責任を果たすのに必要な時間、予算、人員を決めるときに、それらが不十分であれば、

「これだけの時間、予算、人員では、その目標達成はボクには無理です。最低でも、これだけの人員をアサインしてください。もしくは、目標達成時期か、目標利益額を変更してください。」と、しつこく食い下がって、責任と権限のバランスが合うまで交渉を続けます。

このとき、「○○でないと出来ません。」という言い方をすると非建設的な交渉になりがちなので、あくまで「□□ならできます。」という建設的な持っていき方をするのがコツです。もちろん、相手の事情も鑑みて、双方が納得できる落としどころに持っていくように誘導します。


(中略)


また、責任に見合った権限もないのに、無理矢理責任だけ押しつけられたら、それは「逃げるべき時」です。

全力で転職の準備を始めましょう。

恣意的に2箇所で中略したが、その方が話の流れが分かりやすいと思う。

この話には3つのポイントがあると思う。まず、特に中小企業やベンチャーでは時間・予算・人員という経営リソースには限界があり、制限がある中で、どう結果を出すかというところがプロジェクトマネージャの肝であること。絶対にできないものもあるけど、無理すればできることであれば、どれだけ無理して(プロジェクトメンバーに無理させて)、利益は削られるが外注も使って、どのレベルの結果を出すかというところが実務であって、どちらかと言うと最初から「責任権限バランス」に妙にこだわってリソースを要求するような人間は、ヘタれ評価フラグが立ってしまうことが多いのではないだろうか。

さらに、特に中小企業やベンチャーでは時間・予算・人員という経営リソースには限界があるのだから、他のプロジェクトとの兼ね合い、人材育成的な視野、今回プロジェクトだけでなく長期的な経営戦略まで踏み込んで、自分のプロジェクトに貰うべきリソースを経営的に考え、我慢する時には理由を明確にしてチーム全体で我慢し、管理職サイドとはギブアンドテイクの関係を築くべきではないだろうか。ちなみに上司に、経営的な視野で進言を続けていると、いつの間にか頼られて、上司をこっちで操れるようになって、傀儡政権が樹立できるかもしれない。

そして最後。まあ、「全力で転職の準備」は有効なオプションだけど、クビをかけて交渉すれば、プロジェクト的ににも会社経営的にもこちら側に理があれば、むしろ無能な上司の方がクビになる可能性もあるだろう(無能な上司の中には、社内政治だけはプロで、クビにならない人間も多いので要注意)。ただ、最大のリスクは、単に自分が勘違いしていただけで、無能なのは自分の方であるケースも考えられることだ。


そして、もし将来、起業を考えるのであれば、特に創業時にはリソースには絶対に制約がつく。会社員時代から、手持ちの限られたリソースでどう戦うかを常に考えて、部分撤退はいいけど、逃げ出すようなことは絶対無いような習慣を付けておくのが得策なのではないかと思う。


関連記事:http://d.hatena.ne.jp/T-norf/20080120/1201394208:Title



ついでに、こっちはもっと違和感を感じる、小飼弾

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51035812.html:Title

見「極め」というのは事実上不可能。それは未来を読み切るということなので。

だけど、見「積もり」なら可能。外れることもあるけど、外れの度合いが許容範囲内に収まっていれば大丈夫。どうやって見積もるかはさておき、見積もりが出来たとしたら、逃走すべきか闘争すべきかの判断はもう終ったも同然。


勝間式利益の方程式
勝間和代 利益が出れば、闘争。利益が出なければ、逃走。

これでOK。

赤字だからといって、そんなに簡単に逃走できる分野の仕事は極めて少ないように思う。弾氏は仕事という面では才能や経歴があって相当恵まれているからなのだろうか。私が「利益の方程式」を読んでいないから理解できないだけなのだろうか。

ここで元々の話では、「逃走=転職」だったし、もうちょっと違う意味*1に取っても普通サラリーマンにとっては逃走は大黒星だ。手持ち資金がたっぷりあって、ちょっと事業でもやってみようか、っていう立地の経営者でもなければ、「赤字→逃走」なんていう理屈は通らないように思えるがどうだろう。

まあ同じ仕事といっても、受注から納品までのやり方は仕事によってバラバラなので、ちょっと私には理解できない仕組みがあるのだろうか。正直ここは本当に理解できないので、もしできれば、誰か解説して頂けないだろうか。

[半日後追記]

  1. 弾氏は、分裂勘違い君劇場のエントリーを全部は読んでいなくて、「逃走」を受注回避や、その仕事の引き受け手にならないという感じで考えている。
  2. 弾氏の「利益が出れば、闘争。利益が出なければ、逃走。」という箇所で「利益が出れば/出なければ」っていうのは着手前の見積上の話であって、利益や赤字が確定した時点での話ではないようだ。

「1.」が理解できなかった事に加えて、私が「2」の部分で弾氏のエントリーを深く読んでいなかったようだ。弾氏は生粋のフリーランサーなので、割りに合わない可能性がある仕事は初めから断れる立場というのも考えれば分かる話だった。理解できたので、ちょっと恥ずかしいが、このまま晒しておこうと思う。

*1:受託仕事であれば契約解除→損害賠償?。新サービス立ち上げだったら、立ち上げ費用を捨てて失敗確定?