単純労働者は余っているし、支払いも足りないよ(後編)

多忙を理由にずいぶんと長い間更新をとめてしまっていた。すんごい周回遅れだけど、ようやく多忙モードが終息しつつあるので、このブログも長い夏休みから復帰したいと思う。*1

前回エントリーはid:mojimoji氏から貼り付けられたラベルに、そうじゃないって反論しつつ、政治的な考え方や立場を書いた。でも、今GDPについて面白い議論をしているmojimoji氏の意見を全部読むと、思い込みでラベルを貼っていたのはこっちも同じかもしれない。


私自身はソーシャルかリベラルかと言われれば明らかにリベラルだと思うし、労働左派でも右翼でもネオリベでもないと思っている。右派か左派かと言われると基準によってバラバラのような気もするけど、自分ではまあ中道かなって思っている。

そんな私の主観なので、どちらかといえばリベラルとかリバタリアンとか言われるような視点からに近くなるかもしれないけど、私から見た自分自身の考えと、一般的な政治的立場を整理すると以下のような感じかなと思う。

ネオリベ 右派 リベ ソーシャル 極左
1)高い生産性の企業の労働分配率が低い × ×
2)低い生産性の企業の労働分配率が低い × × × ×
3)経営イノベーションで社会全体の富は増える ×
4)競争強化で社会全体の富は増える ×
5)規制や政府直轄事業は極力撤廃すべき × ×
6)福祉やセーフティーネットの拡充が必要 ×
7)富の再配分/累進課税を強化すべき × ×
8)累進課税強化は景気を悪化させる × ×
9)既得権オヤジはぶっ潰せ ×
10)日本の税金は高い ×

でまあ、こういうのって、サヨクってこうだとか、ウヨクってこうだとかいうラベル付けをしてしまう面も強いと思うので、人物判断をするときには注意が必要だと思う。

mojimoji氏のプロフィール欄を見てみると好きな経済学者にハイエク*2があったりもするし、今回のGDPの議論を読むと、優先順位の問題で別に経済成長を無視しているわけではないことが分かる。

そして、一見ネオリベ的に見えるかもしれない私も、経営的・技術的イノベーションでの生産性向上であったり競争力強化を重視しつつも、セーフティーネットの拡充には大賛成だったりする。

ただ、以前に松尾匡氏と絡ませて貰った際のエントリーでも書いたが、私は1999年と2007年のGDP統計の比較で輸出入が倍近くに増えている*3のを見て驚きつつ、日本の社会変化の多くがグローバリゼーションで説明がつくと考えている。そして日本経済を考える際にこういったトレンドを無視して国内経済だけ考えるのは愚かという考えを持っていたり、だから右翼的傾向が強いという面もあるかもしれない。

(ここでの右翼的っていうのは、自由資本主義体制化での経済的な国力・競争力重視っていう方向性)


また、ちょっと前になるが、似たような政治的な立場の話で、クルーグマンがリベラルかソーシャルか、右か左かというような話も面白いと思う。

http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20080513/p2
http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080514/p1
クルーグマン談話@朝日 - shinichiroinaba's blog


他にも、多少右翼的な視点が混じることもあるんだけど、産経新聞大阪社会部が下記のような本を出して、生活保護の改善について主張しているのも面白い。

生活保護が危ない?最後のセーフティーネットはいま? (扶桑社新書 33)

生活保護が危ない?最後のセーフティーネットはいま? (扶桑社新書 33)


で、いちおうの結論としては、既得権オヤジ連中をぶっ潰せ、セーフティーネット強化といった面では特にmojimoji氏とは思いは同じだし、案外酒でも飲みながら話をすれば意気投合できるのかもしれないなと思う。

もちろんGDPの価値だとか、累進課税強化とか意見が対立することはあると思うし、普通の左翼の方々は、社会全体の豊かさ向上を無視して分配を求めることも多いので一般化はできないけど、日本経済について言えば、右とか左とか言ってる場合じゃないっていうのが本音の思いだ。いかがだろう。


P.S.
もう1つ余談。前々回エントリーで、「商品開発やマーケティングやリーダー・マネージャ」が足りないから彼らの給与が高いというように書いてきた部分について、需給関係というのもあるけど、やっぱり成果給的な要素で、特にその方面で有能な人材は、収益に与える影響が大きいというところでの人材価値的な面が大きいと考える方が正しいようと思うので、訂正しておきたいと思う。

*1:実生活的には逆で、今からようやく夏休みって感じなんだけど

*2:余談だけど、最近、池田信夫氏の著書を読んでハイエクの概要をようやく知った経済素人だったりする。池田信夫氏はブログエントリーでも著書でも当たり外れが大きいような気もするが、本書はかなり手間をかけている「当たり」だと思う。また、ハイエクの主張そのものについても、福祉面とかを別にすれば、非常に賛同できる面が多いと思った。というわけでお勧め。

ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)

ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)

*3:輸入で42.2兆円→82.2兆円、輸出で51.1兆円→90.8兆円