ソニーは逃げずに戦え/新ビジネス案No.06

新事業のアイディアとして新奇性はないと思うけど、最近報道されたソニーの1万6千人のリストラに異議をとなえるために、久々の新ビジネス案。


私が大学生をやっていた90年代は、まだトリニトロンの時代で、プレステも全盛期で、就職希望先ランキングでもソニーは常に上位だったと思う。そしてITバブルの末期、プレステ2を発売する直前の2000年3月には、株価はピークの33,900円にまで伸びた。

その後、2003年4月には元祖ソニーショックで2,700円台*1にまで株価は下がり、以降は一進一退の業績推移となり、直近の2008/03期決算では10年ぶりに最高益を更新する。

しかしながら、先週(2008年12月9日)にはエレクトロニクス部門の正社員5%にあたる8千人、また非正規雇用者8千人削減、あわせて1万6千人の人員削減を伴うリストラ策を発表する事態に至る。昨日の場中の最安値は1770円。株式分割を考慮しても株価は1/10に迫る勢いで下がっている。

ソニーは9日に人員や生産拠点5―6カ所を削減する計画を発表している。中鉢社長はリストラに「聖域はない」とし、工場以外でも人員を減らす方針を示した。大規模の人員削減に踏み切る理由については「企業単独の努力を超える需要減に直面している。円高の日本でモノ作りを続け、国際競争力を保つには生産性を改善するしかない。それに向け積算すると人員削減はこのくらいの規模になる」と述べた。
ソニーの人員削減計画、設計・販売も対象に/NIKKEI NET

昨日のNIKKEI NETには、中鉢社長への上記取材記事が上がっていたが、この中で「需要減」や「円高」を理由に、生産性を改善しつつ人員削減することを正当化している。

私は経営者志望だし、どっちかといえば右翼*2だと思うが、こうもアッサリとした人員削減というのは納得がいかない面が強い。ここ数年、輸出企業は円安で利潤を上げ、ベースアップを廃止して給与上昇は抑えつつ、内部留保を蓄えてきたではないか。

米国自動車業界のビック3のようにもはや倒産しそうだというのならば分かるが、昨年最高益の内部留保を使えば、現状の雇用は数年は維持できるだろう。そして、単に一人当たりの生産量を増やして生産性を上げるのではなく、イノベーションを起こして新規需要を創出することに、全力で挑むべきであろう。


そして、ソニーイノベーションを起こすべき対象は、大半の人はすぐに思いつくだろう。音楽や動画コンテンツのネット流通を、リビング(TVとステレオ)とユビキタス環境とで実現できるオールラウンダーとしては、明らかに最良のポジションを握っているのは、誰がどう考えてもソニーだ。

だから、アップルのiPhoneやiPodTouchを超える、DVD画質(720×480)の表示解像度を持った有機ELディスプレイの動画再生ガジェットを何としても作ればいいのだ。メモリは当然交換可能にする。本当はSDカードとかの方がいいと思うけど、ソニーなのでメモリースティックでも仕方ない。*3

動画配信は、ネットに接続したプレステ3+オプション、またはハードディスクビデオレコーダ経由のものを主流にする。ソニーSo-netというISPを子会社に持っているし、キャッシュサーバを主要ISPに分散配置してIPマルチキャストも使ってネットワークトラフィックを抑えつつ、HD画質コンテンツをリビングへと配信する仕組みを、世界に先駆けて開発するのだ。(ぜひ、Winny作者の金子勇さんを顧問に)

今もPSPで似たようなことができるらしいが、リビングにあるブロードバンドでIP Reachableなデバイスや、テレビを録画できるデバイスで動画をメモリ媒体に落とし、メモリ媒体で動画再生ガジェットへデータの受け渡しをするというスタイルを取る。

あと、PC上でもiTunesに対抗するソフトも作るが、APISDKだけ公開して、オープンソースプロジェクトで開発させた方が絶対いいだろう。これは、ネットワークウォークマンの管理ソフトの評判が最悪だったらしいので必須条件。餅は餅屋。ソフトはソフト屋に。

そしてこの際、次世代DVD規格競争で敗れた、元HD DVD陣営の東芝とも組むといい。東芝RDシリーズという優秀なハードディスクビデオレコーダを持っている。こいつは、ネットから録画予約が集中している人気番組情報を知ることができたり、自分と似た録画傾向を持つ他のユーザ情報を元に、ユーザの好みに合致した推奨番組を提示するような先進的な機能を持っている。

というか、個人的にはソニーがCELL(プレステ3で使われているCPU)の生産工場を東芝へ売却して、東芝HD DVDの普及を断念した際に、東芝ソニーが合弁する密約を結んだのではないかなと思っていた。作るのは、PS3ソフトが走り、ネット経由でHD画質を含む映像をダウンロードでき、Blue-Rayの録画再生できるハードディスクビデオレコーダー、PSX3とも言うべきマシンだ。また、CELLの処理能力を生かして、HD動画の編集がビックリするぐらい早くできるような機能もあるといいと思う。でも、かれこれ半年以上たつが、そんな話は全く聞こえてこない。

変なプライドとか、音楽レーベルの利権とか、著作権団体とか、テレビ局とのしがらみなんか、ぶっつぶしてしまえ。今の景気環境を考えると、そんな下らないことに気をとられつつ、自社の社員は大量解雇するというようなことをやっていれば、自社のビジネスも世界経済も先細りしていくのは自明だろう。

「技術で、新規需要を創出せんかい、ゴルァ。」と起業したくてソニーへ入社した久夛良木健氏や、故盛田昭夫氏、故井深大氏は嘆いていることと思う。

「それに向け積算すると人員削減はこのくらいの規模」という言葉は、特に創業者のお二人が存命であれば、絶対に出てこなかった言葉ではないだろうか。中鉢社長は胸に手を当てて、良く考えてみて欲しい。

*1:途中株式の1:2分割あり

*2:政治ポジションが自分でも良く分からず説明できないという話もある

*3:動画も撮影できるデジカメ機能もオプションであるといいな