お金儲け8つの方法

お金儲けにもいろいろな方法があるが、儲けの根源について整理してみたいと思う。当たり前のことも多いと思うが、起業を考える場合、自分(自社)がどの要素にウェイトを置いて、儲けているのか、また今後儲けていくのかということを整理するのに役立つのではないかと思う。

【要素1】 労務提供(労働・個人レベルでのサービスの提供)

これは、儲けの一番単純な要素で、労働の対価として給与を貰うこと。もしくは個人レベルで提供したサービスに対して報酬を貰うこと。開業したばかりのソフトハウスが、社員を常駐請負で他社に送り出したりするのは、まさにこの要素で稼いでいることになるだろう。常駐や派遣をしていなくても、人日単価、人月単価の工数ベースの受託開発も基本は同じ要素が強い。

医師や弁護士についても、医院や弁護士事務所の経営などでは他の儲けの要素とも関係する面もあるが、有資格者がサービスを提供するという面においては、この要素で儲けている面が強いと考えられる。

この要素での儲けの特徴は、大きく儲けることは難しくても、儲けられる確実性が高いというローリスクローリターンという点にある。だから、私も含めて大勢の人がサラリーマンをやっているのではないかと思うし、下請受託開発から抜け出せない会社も多いのだと思う。

【要素2】 生産(製品やサービスのシステム的な生産)

製品やサービスを生産する仕組み(システム)を持ち、個人レベルで提供できる以上に価値があるものを提供することや、大量に生産できることは、儲けの重要な要素になる。

製造業という業種は、この要素での儲けている面が強いが、その他業種であっても、会社としてどれだけ高価値な製品やサービスが、どれだけのボリュームで、どれだけ低い製造原価で提供できるかというのは重要となってくる。

ただ、ここで、ソフトウェアという複製コストがほとんどかからない製品を扱う場合や、ウェブサービスという、サーバと回線さえあれば多量のサービスを提供できるサービス*1を扱う場合は、小規模な会社でも大量の製品やサービスを提供できる可能性があるという点で、異質である。

【要素3】 販売

儲けの重要な要素に販売がある。小売店の利益率は高いし、大航海時代以前から需要と供給のギャップを利用して、需要がある商品を安価に仕入れして販売できれば大きく儲かるのは、良く知られた話だと思う。

一般に、生産した製品やサービスも、販売ができなければ何の儲けも生まない。逆に販売できる製品やサービスをいかに生産するかがビジネスであるとも言えるし、少しでも高い値段で多く販売できるかどうかというのは、儲けに直結した要素である。

それでは販売力とは何かと言われると、これをまとめるのは非常に難しい。ブランドという面もあれば、既存の優良顧客数、販売網の規模や形態、営業力と言われる対人折衝能力、店舗であれば集客力、その他メディア露出や広告宣伝力なども考えられるが、これらを総合して商品を売る力ということになるだろう。

ただ、ここでも広告収入モデルという異質な存在があり、ウェブサービスの大量生産性と結合して、新しいビジネス形態を作っている。広告収入モデルの場合、広告販売能力はもちろん重要だが、広告を販売できるだけのアクセスをいかに集めるかがポイントとなる。

さらに突き詰めると、集めるアクセスと、高い広告料を払う広告主のビジネスとの親和性や、広告への注目度も重要になる。例えば首都圏でマンションを探している人が集まるサイトのページビューや広告クリックは高い単価で販売でき、特定の購買意欲がなく年齢性別も不特定の人が集まるページの広告単価は低くなる。

なお、繰り返しになるが、製造せずに販売だけをするビジネスは成立するが、販売せずに製造するだけのビジネスは成立しない。広告収入モデルであっても下請けであっても、販売ができて売上げが立つから利益が出るのであって、販売は儲けを考える上で最も重要な要素である。

(広告であればGoogle Adsenceという手段もあるが、これはGoogleに広告を販売している形で、広告の販売力としては弱く安く買い叩かれるが、販売のオペレーションコストが極めて低い形態と考えることができると思う)

【要素4】 研究開発

ここからは、次元が異なる儲けの要素になるが、競争力がある新規製品やサービスの開発は、儲けの重要な要素である。

特許を取得したり、他社が真似できないような技術を用いて、有用な製品やサービスを提供できれば、大きな儲けの根源になる。

ただ、研究開発にかかるコストというのは膨大となることが多い一方で、回収できるかどうか不確定であることが多く、起業してすぐに力を入れるというのは危険な面が大きい。そのため、小規模な企業の場合、じっくり開発するよりは、ニッチ分野でアイディア一発勝負の新規製品・サービス一本のみの開発を行い、ニッチなので大手他社が追従しないような形が理想だと考えられる。

(もしも失敗が不可避となったら、素早く手仕舞いして、次のアイディア一発勝負を開発するというルーチン。)

もしくは、研究開発には力を入れずに、大企業などが作った大きな波に乗って、拡大するマーケットに上手く自社のポジションを作るという方法も考えられる。

【要素5】 インカムゲイン

これも次元が異なる儲けの要素だが、インカムゲインは単純で、お金や不動産、その他資産を貸し出すことで収益を得たり、株などでビジネスを所有してその収益(配当)で儲けること。起業家として、将来これだけで生活するのは1つの理想であるが、起業時はあまり縁ないと思われる。

【要素6】 キャピタルゲイン

これも単純で、お金や不動産、その他資産の価値上昇(値上がり)で収益を得たり、株などでビジネスを所有してその価値上昇で儲けること。

起業家としては、自社を成長させて、株式公開を達成しての売出し(IPO)は究極の理想だが、そこまで行ける企業は本当に一握りである。

ただ、IPOを視野に入れた起業をするのであれば、ベンチャー資金の調達や、ストックオプションの活用など、将来のキャピタルゲインを意識した経営というのも重要となってくる。

【要素7】 勝つ・奪う

これは異質に思えるかもしれないが、他者に勝つ、他者から奪うというのは儲けに繋がる。合法的な例でいけば株式のデイトレード先物相場もそうだし、非合法にかかるものだとギャンブルや詐欺などがある。

もちろん、生産力・販売力・開発力(商品力)での面でも勝ち負けはあるが、それとは異なる部分での勝ち負けというのが存在する。

例えば、販売力との境界は曖昧になってくるが、入札やコンペなどでも、できるだけ利幅を大きく取りつつ、他者に勝てる価格で落札(受注)できるかというのは一種のゲームであり、勝ち負けの要素が出てくる。

同様に非合法にかかるものとしては、独占や談合というのも消費者や自治体から収奪していると考えられるし、コピー商品はオリジナル製品のメーカーから収益を奪っているとも言える。

ビジネスの世界、違法ギリギリの線でも儲けるのが重要という考え方もあるが、自分自身や従業員のモチベーション、また周知となった場合の市場イメージという面もあり、ここの考え方は人それぞれだと考えられる。

【要素8】 経営力

最後に、一番高いレイヤー*2の儲けの要素は、販売・生産・開発を総合して考えるような広義のマーケティング。また経営資源の分配も含めて考える経営ストラテジー。これらは、起業家としてはできるだけ高めておきたい要素だが、どちらかと言えば、組織規模が大きくなった場合に、より必要となる知識や能力が多いとも思える。

一方、経営力という面で、特に設立したばかりの会社で最も重要なのが、人・カネを集めてくる能力。大会社にいると意識が薄いかもしれないが、信用力の低い会社に入社する人は少ないし、出資や融資をしてくれる先も少ない。

もちろん収益力から生まれる信用や、支払える給与の金額という面も大きいが、経営者のカリスマ性・企業理念・ビジネスモデルからの将来性の総合力としての求人力・集金力というのは、企業を大きくしていく上では重要だ。

さらに、企業規模の大小を問わず、チームを率いていく統率力、モチベーション維持や士気の高揚といった面も儲けに直結している。人は同じ潜在能力を持っていても、やる気と集中力によって生み出す成果(生産性)は著しく異なる。また、チーム内で適切なコミュニケーションを維持できるかという点も、チーム全体の生産性には大きく影響する。

一方で、数名規模のスモールビジネスでの成功を目指すのであれば、この要素の重要性は多少下がる。

まとめ

私が考える8つの儲けの要素は以上である。

起業のスタートアップ期、拡大期、最終形態においても、この儲けの要素というのは、組み合わせや必要量が変わっていくのが普通だと思うが、起業前の人も、起業後の人も自己採点をして分析してみてはいかがだろう。

例えば、マザーズ上場規模の会社の平均値を100に想定して、シミュレーションゲームの「三国志」とか「信長の野望」の武将データのように、数値化してみると面白い。

どの要素がどこまで伸びれば、起業開始しても良さそうかとか、安定した経営ができそうかという理想値も設定するといいだろう。

詳細の公開は控えるが、私も自己採点してみた。その結果、まだない当社が出現(起業)するのに一番足りないのは、要素2の「生産力」だった。続いて要素3「販売力」、その次は要素8の「経営力」。あと、ウェブサービス系での起業を想定しているが、現在持っている儲けの要素からすると、むしろ違う方面の方が上手く行く可能性が高いようにも感じた。

いずれにしても、じわじわで良いので儲けの要素を増やして、いつの日か起業を成功させることができるといいなと考えている。

P.S.
この8つの儲けの要素は、起業を意識してというよりは、世の中の儲けの要素を、まずは全て分類するつもりで考えたので、企業の分析用としては多少の違和感があるかもしれない。また、直接的な教科書もなく、経済学を専門として学んだことがない私が考えたことなので、分類に不自然な点があったり、先人によるもっと良い分類があるかもしれない。その場合には、ぜひご指摘を頂きたい。


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  • ベンチャー支援事業で優勝した高橋賢伍氏の考える起業の条件

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*1:ウェブサービスの耐アクセス性能というのは、プログラム・サーバ・回線の品質の影響を大きく受けるし、本当に大量のアクセスに耐えられるウェブサービスのシステムを作るというのは大きなコストがかかるものだが、ここでは中〜小規模なものを想定している

*2:階層モデルじゃないんだけど、なんとなく