ウェブサービスで起業するなら地方

これは個人的な思いつきに過ぎないので、もしかすると見落としている観点があるかもしれないが、ウェブサービスで起業するなら東京ではなく地方がいいと思う。それも、できれば大学が多く、かつ景気があまり良くない「地方の大都市」から起業するのがいいと思う。理由は以下の通り。

  1. 一般的に、経営にとって一番重要なのは顧客だと思うが、これはウェブサービスの場合には世界中どこにあっても一緒なので、東京である必要はない。
  2. 続いて、重要なのが人材。「大学が多く、かつ景気が悪い地方」は最適解であると思う。
  3. さらに、事務所の賃料をはじめ、法人物価は東京に比べれば、のきなみ安い。
  4. なんといっても住環境が東京に比べれば格段にいい。職住近接も、低い賃料でOK。生活費も安いので、起業家自身も生活費を削って、起業に注力できる。

ネガティブな要素としては、ベンチャーキャピタルやエンジェルが東京に比べて少ない点と、広告獲得の営業面だろうか。

他の企業とタイアップしたり、法人営業するような展開が出るようであれば東京の方がいいだろうが、「はてな」みたいなスタイルで、一般個人とネット上だけで接点を持つのであれば、特に創業初期は絶対に地方の方が有利だ。

他にも、サーバを設置するデータセンター(IDC)の回線料も、ネットワークトポロジーの問題で、特に太い回線を確保する場合は東京の方が安い。ただ、機器設置の場所代や運用人員コストは東京の方が高いので、大きなトラフィックを集めるまでは、むしろ地方の方が安い面もあると思う。

さらに、人材面でも、本当に凄い人材は東京に集まっている傾向が多少はあると思う。

ただ、本当に凄い人材と、凄いトラフィックを集めるようなレベルまで企業規模が進化したら、東京へ移転すればいいのだろう。

実例としては、京都で創業して東京へ移転して行った、株式会社はてなや、株式会社まぐまぐは、正にこの有利な路線を進んでいったと言えるのではないかと思う。もし本当にそうだとすると、関西在住の私としては、ちょっとだけ心強い。

ところで、一昨日、http://hatena.g.hatena.ne.jp/hatenapress/20080214/1202969302:Title="株式会社はてなが、本社の京都移転を発表"している。営業部隊とインフラ部隊だけ東京において、開発部隊と司令部はやっぱり地方というのが、成長したウェブサービス企業にとっても一番いいのかもしれない。


ここからは余談だが、近藤社長id:jkondo)いわく

アメリカに来た際、少なくとも3年くらいはここに居て、地元の人も雇って開発を行っていきたいと考えていた。だから、こちらでやりたかった事でまだ達成できていない事はたくさんある。実際にアメリカに来てみて、新しい国での事業と、日本の事業を同時に執り行うことの難しさを実感する中で、今後の方針について随分考えた。自分の事だけではなく、社員の生活や、実現可能性などいろいろな問題について考えたが、最終的には日本に戻り、京都へ行くという判断をした。

アメリカでやろうとしていたことが、日本からはできないという事は無いと思っている。世界に通用するインターネットサービスを作ろう、という目標も、必ずしもアメリカに居なければできないという事は無いはずだ。むしろ、作り手の勢いのようなものの方が大事だと感じている。新しい拠点で、そうした勢いを作っていけたらと思う。

http://d.hatena.ne.jp/jkondo/20060822/1156264325:Title="2006-08-22にアメリカ引越しのブログエントリー"があるので、1年半での撤退ということになるのだろうか。行間から苦渋の選択という雰囲気も見て取れる。

退職者も多く出たり、http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20080208/1202439184:Title="はてなダイアリーが誰でも編集できる状態"になったような不祥事もあり、ネガティブ要因を踏まえての決断なのではないかと思う。

おそらく、はてなグループは、まだ2正面作戦をできるだけの組織力がないというか、社長が不在でも伸びていける状態に「本丸」が育っていないないままに、総大将が米国へ切り込んで行ってしまったのだろう。ぜひ、恵まれた経営環境の地で、さらなる躍進を期待したい。


トラックバックさせて頂いた、同じような論点でのブログエントリー

■工藤拓也氏は国際教育と英語教育の観点から、地方発にのウェブサービスにはネガティブ
http://blogs.itmedia.co.jp/kudou/2007/06/web_2dab.html:Title


■藤井堅三氏は、サイバーエージェントの藤田社長への質問を踏まえて、地方でIT起業の少なさに懸念
http://blog.fujii.org/?eid=552380:Title


■植木一夫氏は、大分市の株式会社ムーンズの紹介で、開発系のベンチャー企業は、維持費が安い地方の方が有利ではないかと意見。
http://jmboss.yoka-yoka.jp/e5302.html:Title