労働生産性改善の好例

生産性といえば過去にブログ界で大きな論争があったみたいだが、生産性にもいろいろある。

日本という国レベルでの労働生産性を考えた場合、これを改善した好例は多くは思いつかないが、最近の事例で1つ効果的だったのではないかと思えるものがある。


それは、高速道路の無線課金システムのETC*1だ。

以下、ETCが導入された結果、起きたことを整理してみる。

  1. 車載機はいままでは存在しなかった、売上が発生
  2. 「ゲート設備+課金ネットワークシステム構築」を開発整備(ここでは雇用発生)
  3. 従来の料金収集員の雇用が消滅
  4. 料金所渋滞が劇的に減った。

「1.」は影響が小さいが新規消費を生んでいて生産性はちょっとだけプラスに寄与するだろう。対称的な「2.」と「3.」について考えてみると、償却年数やシステムの運用経費次第という面もあるが、おそらく事業として労働生産性が高いのは、ETCシステム導入後の方ではないかと思う。

また、国全体の生産性で見ると、圧倒的にインパクトが大きいのは「4.」だと思う。これは、明らかに運送業の生産性を上げているし、車での移動を伴うあらゆる産業の生産性を上げているだろう。また、もっと単純な目で見ても、高速道路の単位時間あたりに処理できる通行量が上がっている。そうすると、通行料収入の限界値も上がるわけで、事業そのものとしても生産性向上効果が高い。

他にも、ハイウェイカードが廃止され偽造ハイカを撲滅できて、時間帯割引など効率向上の仕組みも整備されつつある。細かい点としては、利用履歴もWebで確認できるので精算経理処理も軽減され、いろいろな面でメリットがあるので、個人的にはもっと大絶賛されていい事業だと思っている。*2

労働生産性を上げる方法は、あたり前のことだが、1つは「少ない人数でのオペレーションを成立」させることであり、同じ話になることも多いが「総処理件数を高めるような仕組み」を実現することになると思う。

このETCの例はちょっと大規模すぎるが、生産性を向上させている具体的例について考えてみると、新しいビジネスモデルを考える際に、より高い生産性を実現するビジネスモデルを生み出すヒントになって良いのではないかと思う。

過去のビジネスと比べて、より高い生産性を実現しているビジネスモデルとしては、もっと身近な好例があるのだが、これについては、また別の機会に書いてみたいと思う。

余談:山形浩生氏と池田信夫氏の生産性論争について

この論争が行われた2007年2月当時は、ブログを読む習慣がなかったので、ごく最近読ませて頂いた。山形浩生氏のエントリー池田信夫氏の指摘から始まる流れは、どこにどう誤解やツッコミポイントがあるかまで考えると、知的読み物としてすごく面白いし勉強にもなる。中立意見として一番しっくりくるのは松尾匡氏のコメントだった。私も経済学は素人な上に、山形氏ほどの知力も知識もないし、さらに豪快な逃げ手を打つ手段もないので、極力間違いを犯さないように自戒せねばと思う。

*1:ノンストップ自動料金収受システム。Electronic Toll Collection Systemの略らしい。

*2:国家レベルで考えると、不要になってしまった料金収集員の雇用を上手く吸収できるかという問題もあったりしてややこしい面もあるが、このETCの例だと圧倒的に効率化しているので問題ないと思う。ついでに言うと、ETC関連組織で国交省職員の天下り先も作っているに違いないと思うが、ここまでGoodJobだと、全く問題ないと思う。