【転載】資本政策分析:株式会社はてな その2 株主資本

前回記事に続いて、id:boltmanさんの「元ファンドマネージャーシリコンバレー日記」より、人気記事の退避転載です。

こちらの記事では日付と資本金・発行済み株数・ストックオプションの変化から、誰かどれだけ出資して、何株持っているかを類推していて、こういう読みができるのだというところで、とても興味深いです。正しいという保証はないのですが、とても勉強になります。

なお、末尾に記載がある「その3」は存在しませんので、ご了承下さい。それでは、お楽しみ下さいませ。


LastResort*1


資本政策分析:株式会社はてな その1からの続きです



昨日登記簿からまとめたデータをもとに今日は資本の部分をもう少し細かく見ていきましょう。

また、初めに念を押しておきますがあくまで登記簿上の事実分析による予想ですので事実と異なる場合がありますのでその点のみ注意です。

キャピタリスト観点からしてビジネスの実データ以外で押さえておくべき項目は株主構成と妥当な株価の推移がメインになります。


まずはもう一度はてなの増資の流れをまとめてみる


(創設時)資本金1000万、1株10000円1000株で設立

(16.10.13)資本金を2000万に増資。

(17.2.10)資本金はそのままで株数が10000株に。

(17.2.25)資本金が2250万円に、株数が11250に増加。

(17.4.1)資本金が2750万円に、株数が11750に増加。

(18.1.30)資本金が5500万円に、株数が23500株。。

(19.5.10)資本金が5600万円に、株数が23550に。

となります。

ここで不可思議なのは1000→2000、2750→5500はキリがいいのにあとはなんか小出しになってる点。


ここにいくつかのイベントを加えてみる

(創設時)資本金1000万、1株10000円1000株で設立

###(16.8.5)はてなの月間PVが1.5億に(プレスリリースより)

(16.10.13)資本金を2000万に増資。

###(16.12.1)id:naoyaid:kawasakiが取締役に

(17.2.10)資本金はそのままで株数が10000株に。

(17.2.25)資本金が2250万円に、株数が11250に増加。

###(17.3.28)梅田望夫氏が取締役に

(17.4.1)資本金が2750万円に、株数が11750に増加。

(18.1.30)資本金が5500万円に、株数が23500株。

###(18.12.1)id:kossy が取締役に

###(19.3.14)Richard Chenがhatena,Incの取締役に

(19.8.10)資本金が5600万円に、株数が23550に。

だいたい流れが予想できます。


上記に解説を加えてみる

?収益が安定してきて役員報酬がたまった分でid:jkondoが個人で増資?

(16.8.5)はてなの月間PVが1.5億に

(16.10.13)資本金を2000万に増資。

このころはまだid:jkondoの身内が2名役員に残っており(17.2.10まで)その役員報酬をプールして再投資をしたんだと思います。もしくは役員報酬を貸し付けで未払いにしてDES*2



?新しい取締役への株の割り振り?

(16.12.1)id:naoyaid:kawasakiが取締役に(実際の登記は17.2.10)

(17.2.10)資本金はそのままで株数が10000株に(5分割)。

(17.2.25)資本金が2250万円に、株数が11250に増加。

おそらくタイミング的に1250株をid:naoyaid:kawasakiが取得(現在は2500株)



?梅田望夫氏の株は取締役になることとバーターで株の割り振り?

(17.3.28)梅田望夫氏が取締役に就任のプレス(実際の登記は17.2.10)

(17.4.1)資本金が2750万円に、株数が11750に増加。

増資と取締役の選任は株主総会事項なのでまとめてやったんでしょう。おそらく500株を梅田氏が取得?(現在は1000株)



?株式の無償割り当てを実施?

(18.1.30)資本金が5500万円に、株数が23500株。

登記で役員の重任がすべて2月になってるのでおそらく11月か12月決算と思われるので決算の利益処分かと。



?リチャードかkossyにも取締役になるから株を?

(18.12.1)id:kossy が取締役に

(19.3.14)Richard Chenがhatena,Incの取締役に

(19.8.10)資本金が5600万円に、株数が23550に。

おそらくこのラグは株主総会をほかのストックオプションなどとセットにしたんでしょう。


以上から現在の株主名簿を予想してみる

(※あくまで個人的予想です)

id:jkondo一族         20000株

id:naoya id:kawasaki+α    2500株

梅田望夫氏           1000株

Richard Chenid:kossy    50株

発行済み株式総数        23550株

19.8.10時点1株株価40000円




ただ顧問に入ってる磯崎先生もどこかで出してる可能性もあることや、初期のid:jkondoの出資分に対して第三者の資金が入ってる可能性は否定できないこと、それと上記割合に細かいその他の資本が入ってることも予想されるのであくまでアバウトな予想です。

それでもid:jkondoが莫大な資産を持っていることはわかりましたのでみんなでメシでもおごってもらいに行きましょう。


株価の推移に関して考えてみる

株価の推移はおおむね問題ない水準でうまくやってるとは思うのですが、細かいところを見ていくと??のところで若干微妙な事をやってて17.2.25に1株2000-4000で増資したあとに17.4.1に10000-20000で増資をやってます。

おそらく梅田望夫氏が取締役になったために株価を上げてるんですが登記簿上は梅田氏、id:kawasaki id:naoyaは全員17.2.10に就任になってるので微妙なところ。

17.2.10に株主総会をやって取締役の就任、分割、17.2.25分の増資決議をやってるんだと思いますがそのあと1ヶ月で株価が5倍ってのはどうなんでしょう。

まあちゃんと監査役で税理士の吉田先生が株価算定書は作ってるんでしょうけど個人的に妥当性についてはちょっとひっかかりました。一応抜け道としては特別決議で有利発行とかをちゃんとやってれば可能ではあるんですけどね。

そこだけ問題ない手順を踏んでるのであればはてなは増資関連の資本政策としては結構きちんとできてる会社だと思います。


はてなベンチャーキャピタルからお金を引くことができるか

ここからはてなベンチャーキャピタルから出資を募る場合はpost*3で15-20億位までマーケットキャップ*4をとれると思うので20%分の3-4億円位までは調達可能なんじゃないでしょうか。

ただし業績が横ばいの場合は大きな新規事業がないとpre*5で10億がギリギリ、もしくはダウンラウンド*6を行う必要がでるかもしれないです。(あくまで財務資料がないので感覚値です)




今日はこんなところです。

明日予定のその3ではストックオプション関係を分析します。




資本政策分析:株式会社はてな その1

http://d.hatena.ne.jp/boltman/20080311/1205205901

*1:おそらく記事本体へはリンク切れになると思いますが、元エントリーのブクマページを参照をされたい方はブクマ数アイコンからどうぞ。あと、はてな記法で注釈を再現した関係で転載の枠からはみ出ていますが、各注釈は、もちろんboltmanさんによるものです

*2:Debt Equity Swap(デットエクイティスワップ)は財務改善の手法の一つで、負債と資本との交換である。貸し手の立場からは、債権を元手にした出資を意味する。DESと略して表されることもある。wikipedia

*3:簡単にいうと増資後

*4:時価総額のこと

*5:増資前のこと

*6:前回よりも株価を下げて増資を行うこと