日本にシリコンバレーを作れなくても

id:elm200氏の下記エントリーを読んで、思いは同じだが、賛成できない点も多いと思った。

思いは同じ

私も元技術者ということもあり、日本の優秀なエンジニアを、彼らにしかできない仕事をやらせて、イノベーションを起こしたいと思っている。

今の日本で、それをできるのは、優秀な起業家というのも同感だ。

日本でイノベーションを起こすための障害はいっぱいあるけど、特に問題なのは経営力、そしてチャレンジの数だと考えている。

日本にシリコンバレーを作るために一番不足しているもの

以前に、似たような話の流れで上記エントリーを書いたことがある。その中の冒頭部分の再掲になるが、私は「日本企業は新卒採用したプロパーを重用する傾向が強く、一度起業にチャレンジして失敗してしまうと、元と同等のポジションを望むことは困難になることが多い」という社会制度が、日本のイノベーションを阻害している最大要因だと考えている。

そして、id:elm200氏のエントリーでも似たような点で言及があって、それは「エンジニアの実力が正しく評価されない」という箇所になる。これこそが、日本にシリコンバレーを作るために一番不足しているものではないだろうか。

つまり、既存企業においても、エンジニアの実力が正しく評価されるようになれば、優秀なエンジニアは起業資金も貯めやすいし、たとえ起業に失敗しても再度高額な報酬を貰う立場に戻れるわけで、チャレンジは間違いなく増えるだろう。

ただ、これは「ニワトリ−タマゴ」の関係で、成功するIT起業が増えることで優秀なエンジニアの需給が逼迫したり、優秀なエンジニアが興した会社の給与体系が実力主義になるという好循環が成立する構図になっている。だから、id:elm200氏の視点も、もちろん正しいと思う。

でも、日本において、まずは少しづつでも「エンジニアの実力を正しく評価する」「高いレベルのエンジニアを良い待遇で中途採用を行う」という社会へ変えていくということの方が、より簡単なルートではないだろうか。ある程度のレベルの起業に成功しても、優秀なエンジニアを複数人雇って全員に高給を払うのは相当ハードルが高いとも思うので。

足りないものはいろいろある

上記は、元エントリーについた質の悪い「消毒」だけど、結論部分のWebサービスについて消費者が不足しているという一面があるのは正しい。

でも、ちょっと脱線すると、本当のイノベーションが起こせれば需要が喚起できることもあるし、世界的に戦えるレベルで生産性を大きく改善するサービス提供ができれば、収益も雇用もついてくる。まあ、そこまで行かなくても、Webをツールとして使い、収益事業化するパターンは、まだまだいくらでもあると思う。


話を戻して、他に足りないもの。そもそも優秀なエンジニアの数が足りない。これも、「エンジニアの実力が正しく評価されない」という部分は大きいし、大学の教育レベルという問題もある。

優秀な経営者も足りない。これは大企業では、中年以降にならないと、組織のマネージメントを任されないというところや、「優秀な経営者の実力相応の給与を得られない」という部分もあるだろう。

そして、id:elm200氏の言う、社会資本も確かに足りないと思う。ただ、ベンチャーキャピタルも株式市場も存在する。すでにお金持ちになっている技術者に明るい起業家もいる。いうほど悲観する状況でもないし、あくまで、多くの要因の中の1つだと思う。

でも実現できるのは何だろう

私は、こういう革新的な起業文化をつくりたい。そのため、実はいま、財務の勉強をしている。来年5月くらいに米国公認会計士(USCPA)試験を受験するつもりだ。資格は入り口に過ぎない。これを持って私は、資本の視点から、IT 企業の活動を捉えなおしてみたいと考えている。
日本にシリコンバレーを作る方法 - elm200 の日記(旧はてなダイアリー)

正直、ここが一番の消毒ポイントに見えたのだけど、革新的な起業文化をつくるということと、米国公認会計士(USCPA)を受験するという繋がりが私には、よく分からなかった。

資格を元に、米国のVCに潜り込むという作戦だろうか。としても、そのあとは何をどうするのだろう。


私自身は新卒採用プロパー会社員で、ただ、そこそこのポジションで多少経営的な経験を積ませて貰っていて、社内ベンチャーと独立起業の両面を狙っている。

「エンジニアの実力を正しく評価する」「高いレベルのエンジニアを良い待遇で中途採用を行う」という点については、多分社内で一番声が大きく、今の会社の許容範囲では精一杯やっているけど、思うようにできない部分の方が多い。

実現できることは少ないけど、一歩一歩。才能に恵まれたわけではない私にとって、起業は、そういうものだと思う。